研究課題/領域番号 |
25730098
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
草山 太一 帝京大学, 文学部, 准教授 (80384197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 協力行動 / 比較認知科学 / げっ歯類 / 哺乳類 / 鳥類 / 霊長類 / 社会的認知 |
研究実績の概要 |
他者と協力作業を行うためには、相手の行動を正確にモニターし、それに合わせて自己の行動を調整する必要がある。ヒト以外の動物を対象とした協力行動に関する事例は自然観察場面において多く報告されている一方で、実験的な分析にもとづいた研究は少ないことから、本研究では鳥類、げっ歯類、霊長類という系統発生的に離れている動物を対象に協力行動に関する要因を同一の課題から調査することが全体の目的であった。今年度は、鳥類、げっ歯類を対象とした研究成果を踏まえ、霊長類を対象とした研究に着手すること、そして、それぞれの動物の課題達成の状況を見ながら、協力相手であるパートナーとの関係の影響、および、自己と相手が得られる利益とコストの関係について調査することを目標とした。 オカメインコ、スナネズミ、マーモセットを対象に2つの課題を用いて協力行動の生起について調べた。2個体が同時にひもを引くことで報酬の入った容器を手元まで引き寄せられる仕掛けになっている装置を利用した「ひも引き協力課題」で、スナネズミは扉に外カギがついていて、単独では抜け出せないようなケージに閉じ込められたパートナーを救出し、この課題を達成することができた。一方、オカメインコとマーモセットでは、個体同士がタイミングよく装置前に座ることさえも全く観察されなかった。 先の「ひも引き協力課題」を達成することができなかったオカメインコとマーモセットを対象に、複数の個体が群飼されているケージ内に、報酬の入った容器を設置し、この容器に単独では持ち上げられないぐらいの重い蓋をして、彼らの様子を観察した(ふた開け協力課題)。その結果、いずれの動物においても、上位個体が容器を占有したり、常に特定の個体しか装置に近づかないといったように、複数個体が協力するような行動は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれの動物によって、認められるパフォーマンスに違いが認められ、その背景には、それぞれの動物の特性を表す可能性も考えられている。特に鳥類については別々の個体が交代して、同じ役割を担うことはできても、同じタイミングで同一の目標を達成することは難しいことが分かってきている。またマーモセットを対象とした実験から、個体内の社会的関係が協力行動の生起に大きく関わることも考えられる。スナネズミのみに望ましい結果が認められているため、一連の実験結果から何らかの結論を導くにはもう少し実験的分析をおこないたいが、概ね計画通りと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実際の自然場面を想定し、それぞれの動物がいつ、どの相手と協力するかという点について、集団飼育ケージ内に実験装置を導入することで検討することが残っている。またオカメインコとマーモセットはいまだ「ひも引き協力課題」にパスしていないため、その原因が動物自身にあるか、それとも実験の手続き上の問題なのかを同定する必要がある。研究計画の最終年度ということもあり、それぞれの動物の社会構造の違いに注目して、協力行動の成立にどのような要因が必要かを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置を自作することや、装置事態の拡充よりも実質的に実験を進めることを優先したため、昨年度に実験装置のセットアップに関わる経費を一部、繰り越すことになった。今年度は予定していた金額を使用したが、昨年度の繰越金の一部が、次年度に残ることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し金は実験装置の拡充に充てる。特に集団を対象として検討する場合、できるだけ動物の自由な反応を導くことができるように、飼育ケージ内での反応記録装置の整備を進める。
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