ロボットが人の命令を理解し動作するためには,認識可能な単語や文法,および,それらに対応する行動を事前に設計する必要がある.しかし,事前知識に無い単語が発話された場合,ロボットは動作できない.そこで本研究では,ナビゲーションタスクなど自然なインタラクションの中でユーザの言い回しを学習し,既存の知識を拡張させていく語彙学習手法の開発を目的としている. 平成26年度は命令理解のための事前知識を用いた音声認識と,ユーザの自由な言い回しから単語学習を行う手法を併用することで,未知の単語を含む命令発話から,その単語の音韻系列と対応する意味IDを推定する手法を開発した. 平成27年度は,本手法を搭載した2種類の移動ロボットを開発した.1台目は人の音声を認識し前後左右に移動するロボットであり,被験者実験を通して提案手法の有効性と問題点を確認した.2台目は車両キズ検査用ロボットである.ナビゲーションロボットは,可能な動作が移動と回転のみであり,人の命令の種類が少なく,提案手法の有効性が十分に評価できなかった.一方でキズ検査タスクでは,移動以外にも,検査の実行や,結果の表示,パラメータの変更などの動作が必要となり,命令も多様化するため,提案手法の有効性が明確になると考えている.車両キズ検査ロボットを用いた実験は平成28年度に実施する. また,ナビゲーションタスクでは「○○の左」や「○○の奥」等の相対的位置概念が用いられる.このような概念を学習するためには,基準となる物体(参照対象)を推定する必要がある.我々の先行研究では,参照対象の推定と位置概念の学習を同時に行う手法を提案している.しかし,参照対象の候補とその位置が既知であることを仮定していたため,実際のロボットにそのまま適用することができなかった.そこで平成27年度は,ロボットが自律的に獲得した地図情報から,参照対象候補を抽出する手法を開発した.
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