当初の計画および昨年度までの研究成果をもとに、以下に示す2つの研究課題に取り組んだ. 1. 逆包摂法に基づく仮説推論のスケーラビリティ向上: 昨年に引き続き、オンライン頻出パターンマイニング法をベースとする逆包摂型の仮説推論法を検討した。また要素技術となるオンラインマイニングについて、近似圧縮の概念を導入し、スケーラビリティを大きく向上させることに成功した (IEEE BigData2015 および EDBT2015 ポスター発表済み). 2. 仮説推論による分子ネットワーク上の知識発見: フランスLRIとの共同研究を実施し、システム生物学におけるMarkup言語であるSBGB-AFによって記述された分子ネットワークモデルの精密化を仮説推論により行う研究課題を行った.ケーススタディとして、LRI共同研究チームが携わっているGPCRの一つであるFSHR調節ネットワークを用いた.FSHRは性腺刺激ホルモン受容体の一つであり,性腺機能低下症などの疾患に関与するGPCRである.FSHRは2つのシグナリングパスウェイが関係していることがわかっているが,これらがどのようにクロストークしているかについてはよくわかっていない.本課題では、現行のネットワークモデルとマイクロアレイデータを観測として利用し、仮説推論法により、モデルに欠落している調整因子を論理的に導出する計算機実験を行った (ILP2015 ショートペーパー発表済み).また出芽酵母の転写抑制因子ネットワーク上の知識発見を誘導する分析可視化システムのプロトタイプ版を作成した (2016年SIGBIO研究会には発表済み).
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