実社会の意思決定では,人の感性を伴う言語情報解釈由来の非数値情報も判断材料であり,それを客観的かつ妥当に数値化する必要がある.非数値情報の数値化手法の1つとして,ファジィ理論のメンバシップ関数が利用されるが,主観性のみでの構築が多く,解の妥当性が保証されないため,未だ意思決定への応用は非常に限定的である.そこで本研究課題において,平成25年度では関数形状は設定するものの,S-curve関数のような標準的な関数を用いたメンバシップ関数の客観的導出法を提案した.また平成26年度には,関数形状を陽に仮定することなく,一般平滑化関数を導入し,確率論や情報理論における関数設定法と意思決定者による主観設定を融合したメンバシップ関数の客観的導出法を開発した. しかしこれらの手法においては,関数設定やパラメータ推定にやや複雑な最適化計算が必要となり,実現場で迅速に関数設定を行うことは容易ではない.特に,意思決定分野においては,意思決定者が最適解に納得せず,パラメータの微調整が必要不可欠となり,その際には,より効率的な関数設定方法が必要となる.よって平成27年度の研究では,平成26年度に開発された関数形状を陽に仮定しない手法における,効率的解法の開発を行った.具体的には,非線形最適化手法を利用して,最適性条件を導出するとともに,非線形関数のパラメータを昇順にかつ動的に決定できる手法を開発した.これにより,意思決定者の主観部分の情報が入力されるとすぐに,その意思決定者の感性に即したメンバシップ関数が得られるようになり,開発手法の適用範囲が格段に拡大できた.
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