最終年度ではC++言語にて反応シミュレータを実装し、与えられた複数の分子式から反応を起こし、物質の分布を取り出すところまでできるようになった。これを利用して水分子を含む軽分子のシミュレーションを試験的に行った。 計算機の故障、買い替えや計画途上での様々な変更があったが、最終的にはシンプルさを追求し、分子の分布に従った反応分子の選択と分子内の原子選択の二段階で反応分子を選択し、ポテンシャルの差に応じた量の反応が進むとしたモデルが実際的であった。このように極端に単純化した系でも、定性的な現象が見られることは驚きでもあった。 しかしながら本課題で取り組むべき「機械学習を使う」という点には未達成の部分が残った。計画では順方向としての反応からパラメータを抽出し、時間を逆行した遡及的な反応推定を行いたかったが、分布が安定するまでに相当な時間がかかり、またそもそも分布が安定しないことが多々あるために、そのままでは学習パラメータとして使えないという点が知見として得られた。 研究代表者が年度途中で事務部門へ異動となったため、研究をまとめるための時間を取れず論文発表に至らなかった点が悔やまれる。設定された計画はここで終わるが、量子計算を回避しつつ、ある程度に適正な答えを得る方法として十分な手応えを得た。現在のシステムはプロトタイプということで随所に試験的なコードが挟まっているため、今後改良をすすめ、ソフトウェアを公開し、研究・開発・教育のため広く社会に供してゆきたい。
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