本研究は,医療やリハビリ,スポーツ科学に展開されるヒトの筋活動等の体性感覚情報推定技術のため,デジタルヒューマンモデルを構築し計算アルゴリズムを開発した.ヒトの解剖学的形状を持つ皮膚・筋骨格モデルを構築し,形状変化をCGのキャラクタ変形の手法を応用することで低計算コストに実現した.筋モーメントアーム長の推定精度向上(最大誤差45→14%)を実現し,体性感覚情報推定の精度向上に資する. 平成27年度は下記を実施した. 低計算コストでの皮膚およびボリューム筋モデルの変形:コンピュータグラフィクスの分野で用いられるSkeletalSubspaceDeformationを用い,ボリューム筋モデルの変形を行った.重み付けにはAsRigidAsPossible法を用い,また骨格表面形状を活用したサブボーンを用いた.これにより,体幹のように皮膚とボーンが大きく離れている部位においても,皮膚や筋と骨格の間の干渉の問題を解決した. ボリューム筋モデルの変形に基づくワイヤ筋走行の推定とそれに基づく筋モーメントアームの推定:ボリューム筋の内部に筋の走行を表現するワイヤ筋モデルを配置した.ワイヤ筋モデルは特徴点とそれをつなぐワイヤから構成され,各特徴点はボリューム筋を構成する各頂点の線形重み付き和で表現した.また関節中心とワイヤ筋の距離を計算することにより,運動解析において関節トルクを筋張力に分配する際に重要である筋モーメントアームの推定を行った. 筋モーメントアームの生理学的妥当性の検証:推定された筋モーメントアームを文献値と比較することにより生理学的妥当性の検証を行った.外側広筋において,従来のワイヤ筋モデルでは文献値と比較して最大44.8%の誤差があったのに対して,ボリューム筋モデル+骨格表面形状サブボーンを用いたSSDでは最大14.1%まで誤差を低減した.
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