研究課題/領域番号 |
25730161
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石 青 早稲田大学, 理工学術院, その他 (80571330)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 異分野融合研究 / 行動認識 / 行動生成 |
研究概要 |
本研究では、動物のストレスを定量的に操作し、またそれを定量的に計測する方法の構築を目的としている。このような考えにもとづき、動物心理学・薬理学・ロボット工学に融合による新たな実験系を提案した。また、各研究分野における主要な専門知識に関する調査を行った。この調査においては、各研究分野の知見に基づく研究手法の仮説考案・検証に加え、研究費用や発表方法に関しても正確で効果的なマネージメントを行った。 1.研究成果を公表するため、ジャーナル論文(2本)を発表し、国際会議(ICRA)で投稿した。 2.ラットのストレスレベルに関する行動変化を定量的に推測する為に、ステレオカメラや音声センサからの情報を獲得し、画像及び音声処理アルゴリズムにより、ラットの位置検出、ラットの行動認識などを行うコンポーネントをラット形ロボットに実装した。具体的に、静的なパラメータと動的なパラメータをニューラルネットワークのような識別器の入力パラメータとして、トレーニングを行い、ラットの行動認識システムを構築した。それにより、FFT解析による音声認識の結果と融合することでラットの行動の状態や変化などを明らかにした。 3.認識モジュール及び行動学習のアルゴリズムを開発することで、ラットとの間に任意の関係性を作り出すことが可能なロボットの行動生成器を構築した。ここでは、ロボットがラットの個体差等に応じて、各行動を構成する動作プリミティブを適応的に獲得することが実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの研究活動を円滑に進行することにより、研究計画初年度の到達度は90パーセントであった。残りの10パーセントに関しては、ラットストレスレベルを操作するための動作アルゴリズムの検証。これまで、ロボットがラットの個体差等に応じて、各行動を構成する動作プリミティブを適応的に獲得することが実現した。ラットストレスレベルを操作するための動作アルゴリズムも構築したが、評価実験を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.ラットストレスレベルを操作するための動作アルゴリズムの検証 ロボットとラットのインタラクション実験を通して、前述の友好や戦略行動がラットのストレスをどのような影響を与えるかを検証する。 2.ラットとロボットの相互作用において、ロボットの行動、ラットの行動とラットのストレスレベルの複雑な関係の数理モデルを構築する。 ロボットと相互作用実験を行うことで、ラットのストレスレベルに関する行動(活動量、ロボットへの接近頻度、毛繕いと立ち上がりの頻度など)を計測し、必要なパラメータと各パラメータの係数を導き、ラットのストレスレベルと行動の関係モデルを求める。そのうえ、ロボットの行動とラットのストレスレベルと行動の関係モデルを導ける。 3.実験系の評価 これまでの研究を踏まえ、開発した認識モジュール、行動生成モジュール、関係モデルを実際にラット形ロボット WR-5 に実装し、評価実験を行う。具体的に、オープンフィールドに置かれたWR-5 が、前述のストレスレベルに関する行動を再現することで、ラットとのインタラクション実験を行う。実験のプロトコルは、心理学の専門家の意見を頂いた上で決定する。例えば、ラットのストレスレベルを低減する場合、高ストレスである精神疾患モデルラットを実験対象として選定する。WR-5 は、毎日上記のモデルラット(6 匹)に対し、一定の時間内に(10 分程)それぞれ友好的相互作用を行う。毎回実験の後、ラットのストレスレベルを算出する。このような実験手順で、連続的に 6 日間での実験を行い、取得したストレスレベルが減る傾向が生じれば、本システムが研究目標を満たすことが確認できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に、ロボットと複数のラットとのインタラクション実験をを行い、その結果を基にシンポジウムにおいて発表する予定であったが、実験データまだ十分ではなかったため、発表をキャンセルし、未使用額が生じた。 このため、実験の再実行とシンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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