平成26年度においては下肢の訓練における力覚提示及び全身運動における視覚提示装置の開発と検証実験を行った. 平成25年度までは上肢の運動誘導を行うためのデバイスの開発と実証実験を行い,肘の屈曲動作,肩の挙上動作,リーチング動作における力覚提示を実現した.下肢の力覚提示では足裏の圧力に基づいて,左右の大腿あるいは腰部にワイヤーの張力による力覚提示を行う.しかし,本手法では被験者によっては力覚を感じにくい場合があった.これは,下肢は上肢と比較して体節の慣性が大きく,小型のアクチュエータでは力覚を感じにくいためであると考えられる. そこで,慣性の大きい体幹や脚部においては力覚提示ではなく,視覚提示が有効であると考え,視覚提示による運動誘導装置の開発を行った.視覚提示では全身の関節位置を取得可能な色距離画像センサを用いた.全身の関節位置より重心と足裏反力の代表点(ZMP)を算出することで,各足裏に働く反力を推定することが可能になる.これを可視化することで足裏にかかる荷重量を調節するリハビリテーションに応用する.実際に,健常者を対象とした足踏み動作の実験において,床反力計と提案したアルゴリズムによる反力を比較した所,反力が変化するタイミングが一致していた.このことから,本提案手法の有効性が確認できた.本研究では,片麻痺者を対象とした研究であったが,片麻痺を持つ被験者の方に実験のご協力が得られなかった.但し,片麻痺者と同様に左右非対称な歩行を持つ片側下肢切断者の方からは実験協力が得られた.切断者の方での実験の結果,本提案手法によって義足への適切な荷重を誘導することが確認できた.これは簡易的なリハビリ支援機器として意義のある成果である. 今回の研究期間において片麻痺者の方から実験協力は得られなかったが,現在片麻痺者を対象とした新規の研究課題を進めており,本研究で開発した機器の有効性を検討する.
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