研究課題/領域番号 |
25730165
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
飯尾 尊優 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (70642958)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヒューマンロボットインタラクション / 語彙の引き込み |
研究概要 |
当該年度では研究実施計画に基づいて、人の指示行動のモデル化と確認行動生成アルゴリズムの構築に取り組んだ。さらに、収集した人とロボットの対話データから語彙の引き込みについて新たな知見を得た。 具体的には、人同士の対話における語彙の引き込みが人とロボットの間でも生じるということを統計的に示した。特に、人がロボットに対して環境中の物体を指示し、ロボットがその指示された物体を確認するという、人とロボットが物理的な空間を共有した状況における物体指示対話において、物体指示に用いられる語彙の引き込みが生じることを明らかにした点が新しい。人同士の研究でも、その状況での物体指示対話で語彙の引き込みが生じることは明らかにされていなかった。語彙の引き込みは、人の対話の原則の理解や人と人工物の自然な対話インタフェースの開発に重要であると考えられている。本研究成果は、実環境で活動する社会的なロボットの自然言語インタフェース設計に役立つ重要な知見である。この結果は、ソーシャルロボットのインタラクションを専門的に扱う国際論文誌IJSRに投稿中である。 人の指示行動のモデル化について、上記の対話データから、人が物体を参照する際の特徴として、物体に記載されている文字列、色、大きさなどを用いることが分かった。ただし、物体の内容や配置により、どの特徴がどの程度用いられるかに違いがあることも明らかになったため、今後、複数の配置パターンで使用される特徴の関係を明らかにする予定である。 確認行動生成アルゴリズムの構築について、人の指示発話に対する音声認識と指さし認識に基づいて、指示物体の候補を推定するシステムのプロトタイプを構築した。今後、ロボットの確認行動生成アルゴリズムを構築し、指示発話-認識-確認までのインタラクションを実現するようシステムを拡張する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人の指示行動に関するデータを収集するための実験システムは構築済みであり、すでにいくつかの指示行動に関するデータを保有している。 複数の配置パターンで使用される特徴の関係などを調査するための実験も、枠組みはすでに構築されているため、迅速に実施することができる。 確認行動生成アルゴリズムの構築についても、人の指示発話に対する音声認識と指さし認識に基づいて、指示物体の候補を推定するシステムのプロトタイプをすでに構築しており、ロボットの確認行動に対する人の振る舞いに関するデータ収集を行うための準備は整っている。以上の事は、当初の研究計画に記載したスケジュールの通りであり、研究は概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、本研究は当初の研究計画に示した通りに順調に進展しているため、研究計画の変更はない。 今後、構築された指示物体認識システムのプロトタイプを用いて、人の指示発話から推定された指示物体候補の確信度から、ロボットの確認行動を生成するアルゴリズムを構築する。アルゴリズム構築のために、ロボットが確認発話を行った場合の人の指示行動の変化をより精緻に調べるための実験を行い、ロボットの確認発話と人の指示行動の対のデータを収集し、その共起関係について分析を進める。 構築された確認行動生成アルゴリズムをロボットに実装し、人が指示した物体を認識し、ロボットがその物体を確認する指示物体認識システムを完成させる。この指示物体認識システムを用いて、提案アルゴリズムに基づいたロボットによる確認発話が、指示物体認識の誤認識の低減に有効かどうかの検証を進める。具体的には、確認行動生成アルゴリズムを導入する場合とそうでない場合、また明示的にある言葉を使って指示するように依頼する場合で、指示物体認識誤りの発生回数、人の指示発話の曖昧性、被験者のロボットに対する印象などを評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、実験システムの構築及び被験者実験を主に進め、実験結果の論文投稿を重視したことで、当初予定していた学会参加を行わなかった。そのため、実験システム構築に必要な物品費や被験者実験の謝金等が増加した一方で、旅費や学会参加費などの支出が抑えられた。結果として、次年度使用額が若干生じることとなった。 次年度使用額は、学会参加に伴う旅費及び参加費等に使用する予定である。
|