本研究では、人間とロボットの物体指示対話における語彙の引き込み現象に関する研究と、その知見に基づいて、人間から指示物体認識しやすい言葉と指さし動作を引き出し、指示物体認識精度を向上させるためのロボットの確認行動生成アルゴリズムに関する研究を実施した。まず、語彙の引き込み現象に関する研究では、人間が環境中の物体をロボットに指示しそれをロボットが確認するという状況を設定し、人間に複数の物体を繰り返し指示させ、その時の指示で用いられた言葉が、ロボットが確認で使用した言葉と一致するかどうかを計測した。その結果、被験者はロボットが確認で使用した言葉を用いて次回の指示を行う傾向があった。すなわち、人間とロボットが物理空間を共有する状況で語彙の引き込み現象が生じることを示した。次に、先の研究を通じて、語彙の引き込み現象に加えて見出された、ロボットが確認で冗長な情報を用いると、人間は指示の情報を減らすという傾向を考慮し、ロボットは物体の確認において物体を特定するために冗長ではないが十分な量の情報を用いるべきであるという仮説を立て、これを実現する確認行動生成アルゴリズムを構築した。これは、ロボットがそのような確認を行うことにより、人間は自らの指示における情報を減らすことがない一方で、語彙の引き込み現象により、ロボットの使用する十分な情報を用いて指示を行うようになると考えられるためである。この設計の有効性を検証するため、提案設計による確認を行うロボットと、物体の持つ情報をすべて用いた冗長な確認を行うロボットで、指示物体認識の精度を検証した。その結果、提案設計による確認を行うロボットとインタラクションしたほうが、認識精度が向上することを示唆する結果が得られた。
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