研究課題/領域番号 |
25730167
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西山 雄大 新潟大学, 研究推進機構, 研究員 (90649724)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会的認知発達 |
研究概要 |
本研究は,「社会的関係に対する観測者の視点」に焦点を当てて,ヒトにおける社会的認知の発達過程を明らかにし,そこで用いられた認知科学的手法を,自閉症者の社会的認知の特性の理解を促し,療育モデル構築の一助とすることを目的としている.これまでに,6,7,9,11歳の定型発達小児(約120名)および対照群としての成人を対象とした認知課題を実施した.この認知課題で,被験者は社会的関係を表現した複数の人形劇を分類(人形劇の意味を知らされない場合)または評価(その意味を知らされた場合)した.その結果,他者の立場で世界を認識可能になる役割取得能力が獲得される7歳までは不適切な分類がみられ,さらに9歳までは評価を質問内容に合わせるような自発的な調整があることが認められた.この結果は,他者(本課題では実験者)の意図を理解してなお,自身の内観を調整する必要があることを示しており,社会的認知において自他非分離的な処理が必要であることを示唆している.この結果は,特に他者を介した社会的学習において,これまで自他の分離を前提とした理論が数多く提案されてきたのに対して,他者の立場での情報処理が自身の立場でのそれと分離できない可能性があることを示している点で重要な結果である.これまでの研究成果は国内学会で2件,国際会議等で4件(うち1件はyoung author award受賞)発表され,その理論的な側面についての論文は査読中であり,現在,実験の詳細についての論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では先の認知課題の予備的な結果を元に,定型発達者と自閉症者の差異を検証する予定であった.しかし認知課題開始当初に,定型発達小児の応答が個体発生的に特徴的であることが期待されたため,さらに詳しい調査を行った.そのためこれまでのところ被験者群は定型発達者のみとなっている.しかし自閉症者の認知特性を明らかにするためにも,定型発達者の認知特性の明確化は必要である.現在までの成果はこれに寄与している点で,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当初は先の認知課題を利用してインタラクティブ課題へと発展する予定であった.これまでの結果から定型発達者の社会的認知における「視点」の重要性が明らかとなったため,よりその部分に的を絞った課題へと変更し,その上で対象者を自閉症者へと拡大する予定であり,そのための課題を作成中である.具体的にはバーチャル環境下でのCGキャラクターとのインタラクションを眼球運動レベルで制御可能な実験環境を構築している.現在,予備実験の実施段階まで到達している.
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次年度の研究費の使用計画 |
予備実験の結果から定型発達小児のデータをより詳細に解析する必要が生じ,次段階の本実験実施に遅れが生じたため. 25年度の結果を踏まえて,新たな認知課題を制作する.特に精度に信頼のある画像解析ソフトウェアを使用する必要がある.
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