本研究では,高速フーリエ変換(FFT)などを応用して,次の2つの手法を提案した.(1)「癒しスポット」などの観光ルートを推奨するために,写真の「心地よさ」を定量的に計測する.(2)各スポットの写真からメロディーを生成する.これにより,従来の方法に加えて異なる視点から観光地の魅力を観光客に伝えることができると考えられる. H25年度は,主に1次元FFTを応用し(1)及び(2)の方法を提案した.尾道市の観光スポットの写真250枚について,(a)ホワイトノイズ,(b)1/fゆらぎ,(c)レッドノイズに分類する実験を行い,それぞれのカテゴリーに分類された写真の特徴について考察した.この結果について,本学美術学科の教員や学生,市民に意見を求めたところ,尾道市の観光スポットが有する特徴を反映した分類ができているとの前向きな回答を得た.また,画像を分析する過程でスペクトル解析により分解された「波」を音高に変換し,和音を生成する方法についても提案している. H26年度は,画像の平面上のフラクタル性を検出し,より人間の直観に合致した写真の分類が可能となるように,また,平面上の特徴を考慮した和音抽出を実現するために2次元DFAやFFTを応用した方法も提案した.また,同じ和声進行の曲であっても,音の「厚み」を変化させることにより,印象が全く異なる曲を生成することができる.写真の特徴に応じて音の厚みを変化させ,写真の特徴をより反映させた曲を生成することも考えている.予備実験として,100曲のクラッシック音楽の楽譜データを分析し,音の厚みにより作曲者別に曲を分類する方法についても提案した. これらの成果については,国際会議(WCE2014,IMECS2015)のプロシーディングスに掲載され(Best Paper Award受賞,Merit受賞),日本感性工学会の全国大会や研究会等でも公表している.
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