研究課題
エピゲノムによる遺伝子発現制御機構を解明するためには、ヒストン修飾やDNAメチル化などの科学的制御が関与する一次エピゲノム機構に加えて、クロマチン構造変化などの物理的制御が関与する高次エピゲノム機構を解析することが重要である。本研究課題では、統計科学による数理モデリングとスーパーコンピュータによる大規模計算の融合により、クロマチン相互作用を網羅的に解析するChIA-PETから得られる高次エピゲノムデータから、クロマチン相互作用過程をベイズモデリングにより解析し、高次エピゲノムによる遺伝子発現制御機構を解明するための統計解析手法を開発する。平成26年度は以下の二点に進展があった。① 前年度開発したクロマチン相互作用過程のベイズモデルとその推定法の改良を行った。具体的には、ChIP-seqによるタンパクの結合やヒストン修飾、FAIRE-seqによるクロマチン開閉領域の共局在情報を事前情報として取り込むベイズ推定法を開発した。また、シミュレーションデータおよび実データによる構築されたモデルの有用性を検証した。② クロマチン高次構造情報を取り入れた遺伝子発現制御機構に関する数理モデルの構築を行った。具体的には、①のベイズ推定を用いて、二種類の細胞株(A549、HUVEC)のChIA-PETデータを解析し、細胞の特異性を決める転写ファクトリーを同定し、構造の違いがどの程度転写ファクトリーに存在する遺伝子の発現に影響を与えるかをモデル化した。
3: やや遅れている
研究実績の概要で述べたように、平成26年度は本研究課題に必要な解析の要素技術を深化させ、研究協力者との共同研究も順調に進めることができたが、研究代表者の所属先研究機関の変更と新しい研究室の立ち上げ作業により、モデルの検証作業に一部遅延が生じた。そのため、当初の研究計画を一部変更し、モデルの検証および研究成果の発表を平成27年度に引き続き行うこととする。
前年度までに行った研究成果を踏まえ、高次クロマチン構造データ解析の理論基盤を構築し、高次クロマチン構造による遺伝子発現制御機構の解明を目指す。また、得られた研究成果を論文として投稿し、国内外での学会発表のほか、開発したソフトウェアの公開を通して、広く社会へ発信する。
当初の研究計画では、平成27年3月までに、数理モデルの構築および実データを用いたモデルの検証実験を実施するとともに国際学会において研究発表を行い、研究成果をとりまとめる予定であったが、研究代表者の所属先研究磯関の変更と新しい研究室の立ち上げ作業により、当該研究に関する実験に遅延が生じたため、全体の研究計画の進捗が遅れ、当初の研究訓画を変更する必要が生じ、未使用額が発生した。
このため、前年度に行うことができなかったモデルの検証と国際学会での発表を次年度行うこととし、未使用額はそのための経費に充てることとしたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
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