研究概要 |
血液の基本的検査値を複数組合わせることで副腎不全状態を予測できるモデルを構築した。検査項目は健常対照群49名および副腎不全患者群18名で多く測定されていた25項目の中から予測精度が高くなる組み合わせを選択し、結果として7項目(乳酸脱水素酵素[LDH], 血清Cl[Cl], HDLコレステロール[HDL-C], 単球数[Mono#], 赤血球[RBC], ヘモグロビン[Hg], ヘマトクリット[HCT])を組み合わせることで精度の高いモデル構築ができることがわかった。なお、モデルの構築にはパターン認識手法の一つである自己組織化マップ[SOM]によって教師なしの競合学習を行い、学習結果のマップを用いることで新規データの予測も可能としている。 この副腎不全を予測できるモデルと、従来の研究で明らかにしてきたクッシング症候群[CS]を予測可能なモデルを併せることで、最終的に13項目(γグルタミルトランスペプチダーゼ[γ-GTP], LDH, 血清Na[Na], 血清K[K], Cl, HDL-C, 好中球数[Neut#], 好酸球数[Eosi#], リンパ球数[Lymp#], Mono#, RBC, Hg, HCT)を組み合わせて構築したモデルによって、副腎不全とCSを同時に予測可能なモデル、すなわちコルチゾール過剰な状態と不足な状態を判断できるモデルを構築することができた。このモデルに実際のCS術後にステロイド補充療法を実施した患者8名の時系列検査データを当てはめて当時の患者状態を予測させたところ、予測結果と当時の臨床所見・入院状況は概ね一致したため、モデルの妥当性を確認することができたことから、本モデルを用いることで客観的な補充量指標が確立できる可能性が示唆された。
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