研究課題/領域番号 |
25730193
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
江草 由佳 国立教育政策研究所, 研究企画開発部教育研究情報推進室, 総括研究官 (60413902)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 情報探索行動 / 情報検索 / 情報検索システムの評価 / コンセプトマップ |
研究実績の概要 |
探索型検索(Exploratory Search)とは、探索者が学習しながら情報ニーズを明確化しつつ、問題解決を進めるプロセスである 。本研究では、検索前後の知識の変化を直接的にとらえる評価手法の開発を目指す。まずは、コンセプトマップを用いて検索前後の知識の変化を測れるかどうかについて検討する。 申請者らは、これまで探索のトピックや探索条件が明らかに異なる状況として、環境問題と旅行というトピック、収束と発散という探索条件を設定し、探索の前後のコンセプトマップの比較分析を行なってきた。その結果、条件やトピックによってマップの特徴が異なることが明らかになっており、コンセプトマップによって知識の変化を図ることができる可能性を示唆している。本研究ではこのコンセプトマップを用いた実験の分析をさらに進め、より精緻なコンセプトマップ分析を目指すとともに、追加で実験も行ない、評価手法としての考察を試みる。 平成27年度は主に次の3点を進めた:a)検索システムの違いを判定するための準備として多様な検索結果を返す検索システムの開発を、平成26年度までに開発したベースライン検索システムを基に開発した。Wikipediaのカテゴリ情報をもとに多様な検索結果を返す手法について検討した。b) a)で開発した検索システムについて、NTCIR(情報検索システムの参加型評価ワークショップ)に、その検索結果を提出し、多様な検索結果についての評価を進めた。c) 実験で得たコンセプトマップの「リンク」の意味的な内容分析手法を検討し、タグ付けを行う手法を検討し、昨年度タグ付けを行ったデータをもとに分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度では、検索システムは、多様な検索結果を返すものを開発した。ただし、検索結果を返すアルゴリズムを検討し、サーバー上で、検索結果を返すことができるようになったが、利用者実験に使えるように、検索結果をWebブラウザへ表示する機能などが未開発である。多様な検索結果については、Wikipediaのカテゴリ情報を利用して、返す方法について検討し、NTCIRに参加し、評価を行った。多様性としては、ベースラインとさほど結果がかわらず、思うような多様性を返すような検索結果とはならなかった。 これまでは、コンセプトマップのノードの数などの数値的な値をつかった分析手法を用いてきた。今年度は、コンセプトマップ中のノードラベルやノードとノードをつなげているリンクの意味などの分析を進め、タグ付けしたデータに対して分析をすすめたが、もともと、タグ付けを想定していない実験想定の中おこなった実験であったため、タグ付けの分析結果はかんばしくなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、実験環境に使うための検索システムの開発をすすめてきた。ベースラインの検索システムについてはおおむねできたが、対比するためのシステム開発が難渋している。最近の研究では、情報探索行動の評価について、必ずしも対比する検索システムを使った実験ではなく、同じ検索システムを使った実験でシチュエーションが異なった場合を対象とするものもあるとなってきている。そこで、対比するシステムの開発にこだわるのではなく、他の方法(実験条件を工夫)なども検討して実験を進めたい。 また、これまではコンセプトマップのみを研究対象としてきたが、検索している最中のログとコンセプトマップをあわせて分析する方法なども検討する。そのために、現在のベースラインを改良して、検索中のログをとれるようにするなども検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較実験のため、多様化検索システムを開発しそれをもちいた実験を実施する予定だったが、開発に想定以上に時間がかかった。
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次年度使用額の使用計画 |
検索システムの開発の方向性の検討も含め、多様化検索システムだけではなく、ログをとる方向への開発も検討する。評価実験の実施に必要な実験用PCのレンタルや実験参加者への謝金、研究成果発表のための英文校閲などに使用する予定である。
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