研究課題/領域番号 |
25730201
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
上椙 英之 神戸学院大学, 人文学部, 研究員 (50600409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デジタルアーカイブ / 石碑 / データベース / 金石文 / 風化 / 画像処理 |
研究概要 |
【金石文の風化パターンの解析・定格化】という課題に対し、御影石・砂岩などで作られた石碑の風化状況を調査するため、当初の目的地である兵庫県神戸市(御影石の産地)/大阪府阪南市・兵庫県南あわじ市(和泉砂岩の産地)のフィールドワークを行い、デジタルカメラでの斜光撮影による金石文のデータ収集を行った。データの収集の際、材質や設置環境(建立年代・屋外・屋内・日照・水辺など)も含めて収集し、金石文の風化をパターン化した。結果、当初の想定通り、金石文の風化は、1)字形の“島”になった凸部分が崩れる.2)石碑表面が磨耗するように風化する.3)字形に関係なく表面全体の粒が崩れ落ちる.の3つの風化パターンが顕著にみられた。 さらに、その収集データを用い、材質や地域的な特色、経年変化と風化パターンとの相関関係を調べる過程で、苔や虫の卵、貝殻などの付着物が乗った新たな風化のパターンを示すサンプルが多いことが判明し、この付着物が、解析の際、特に深度のレベルを計測する手法の場合、想定以上に解析精度を下げるノイズとなるという問題が浮上した。これらのサンプルは「日照」「水辺」という外的要因との相関関係がみられた。当初の計画にあった福井県敦賀市のサンプルの多くがこの外的要因の影響が強いと思われるため、調査の前にノイズ除去のための新たな撮影手法の開発が必要と判断し、福井県の調査のみ次年度にまわすこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査の過程で、本年度以降の課題である画像処理の精度を下げかねない問題点が浮上した。この問題点を解決するため、撮影方法の改訂を近郊の調査地の実験を通して行うこととし、当初の計画にあったフィールドワークの調査地のうち、遠隔地にあたる福井県のみ、新たな撮影方法が完成した後の調査として次年度にまわした。 以上の点からやや遅れていると判断するが、新たな撮影方法は、次年度以降の成果をより高い精度で実現することに役立つことが期待されるため、最終的には当初の目的以上の成果があげられるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(26年度)は当初の計画通り、25年度に収集したサンプルを用いて解析用ルーチンの策定と解析プログラム開発と実験を行う。収集したデータから風化パターンによって試料を分類し、そのうち、凹みと文字の凹みを比較して文字の凹みがより深く、風化がそれほど酷くない試料に対して、石碑表面の凹凸をヒストグラム解析による閾値を用いて、最も深い凹部分を表示する2値化画像を求める解析プログラムの開発・実験を行う。 また、25年度の調査により、解析結果を下げる原因となる苔や虫の卵といったノイズを除去するため、撮影時にノイズに非接触でマークをつける新たな撮影手法を開発し、その手法を用いて福井県敦賀市の調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の調査の前半で、以降の課題である画像処理の精度を下げかねない問題点が浮上した。この問題点を解決するため、撮影方法の改訂を近郊の調査地の実験を通して行うこととしたため、当初の計画にあったフィールドワークの調査地のうち、遠隔地にあたる福井県のみ、新たな撮影方法が完成した後の調査として次年度にまわした。その他の調査地は近郊のものばかりで旅費が発生しないため、当初計画していた福井県の調査費用が次年度使用額として生じることとなった。 福井県敦賀市の調査は25年度に行う予定であったが、26年度に調査を変更したため、25年度の敦賀市の調査費用として計画していた旅費は、26年度に同じ敦賀市の調査費用として使用する。 また26年度の旅費として計画している費用は計画通り使用する。
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