研究課題/領域番号 |
25730202
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本教育大学院大学 |
研究代表者 |
山田 雅之 日本教育大学院大学, 学校教育研究科, 准教授 (10610206)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 学習科学 / 協調学習 / 学習支援システム / 学習過程 / 教師支援 |
研究概要 |
長期自立型のプロジェクト型協調学習がより多くの教育現場で実践されるようになり,協調的な学習場面における学びの過程と,そこでのグループやクラス全体で起きている社会的な相互作用の過程を学習者が振り返るための支援システムが求められている. そこで本研究では,こうしたプロジェクト型の協調学習場面を対象として,そこでの学習過程と社会的相互作用過程を俯瞰的に可視化する学習システムを開発する.このシステムによって,長期自立型のプロジェクト型協調学習を実践する効果として,学習者の興味関心の拡大や学習における理解深化が起きていることを明らかにできると考えられる. 本研究の意義は,実践的な協調学習場面において学習者のみならず教師も含めた授業実践の振り返りを可能としている点,さらに長期の学習過程を共有することによって,従来の学習理論を拡張することにある. 平成25年度はシステムウェブページを開設しシステムの開発を中心に研究を進めた.また,授業におけるデータを蓄積し,システム開発後に入力することで可視化し,システムの改修につなげている.研究成果として学会発表を1件実施し,論文2本を投稿中である.平成26年度は前年度の知見からシステム改修をさらに進める.また実践の中での利用を目指す.社会的相互作用と学習過程を可視化することで教師や学習者の支援が可能かどうかについて検討を進めたい.また,最終年度であるため,より多くの研究成果を発表したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,開発中の学習過程可視化システムを元に,より一般的な協調学習場面において適応可能なシステムの開発を実施した. 具体的には,協調学習場面における社会的相互作用の過程となるグループの情報を入力-蓄積するモジュールの開発,およびクラス内で学習者一人一人がどのような考えを持っていたかを示す学習内容に関する学習過程の情報を入力-蓄積するモジュールの開発,さらにそれらを,個人-グループ-クラス,という人数の単位や,長期-短期といった期間の単位で可視化する出力モジュールを開発した.システムにはオープンソースのCMSであるmoodleを利用し,一部のモジュールにはGraphviz等を利用した.具体的なシステムの仕様を決定し,業者へ委託後サーバー上にシステムウェブページを設置した.システムウェブページ上でシステムを動作させ,試験的にデータを入力しシステムの改修へとつなげる.データの分析から協調学習場面での実装を想定しシステム改修を検討した. 対象としている学習場面は,長期間における学習過程である.具体的には,認知科学を4年間学習し卒業論文を完成させた学習者のデータを利用した.授業ではJigsaw法という協調学習を中心に学習者自身の興味関心からプロジェクトに分かれ実習形式の授業を実施していた.データは学習者(20名程度)の2年生後期から4年生の卒業論文に至るまでの学習過程を利用した.これらの授業では,興味関心によってグループ作成がなされており,グループメンバーのデータが蓄積されているため,社会的相互作用過程のデータとして利用している.両者のデータから,学習過程と社会的相互作用過程が如何に卒業論文のテーマに影響しているかを検討し,さらに学習者の興味関心の拡大や学習の促進について検討している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,開発されたシステムを実際の長期自立型のプロジェクト型協調学習場面に実装し,システムの改修を実施する.さらに,そこから多様なグループあるいはコミュニティーに所属し,多様な相手と相互作用することが本人の興味関心の拡大や学習の促進に役立つことを明らかにしていく. 具体的には2つの実践および分析を計画している.一つは平成25年度にサンプルデータとして利用した大学学部生のデータを拡張し,サンプルデータを増やすことを計画している.利用したサンプルデータの前後数年のデータを利用し,長期自立型のプロジェクト型協調学習の実践が興味関心の拡大や学習の促進を支援しているかどうかについての検討を実施し,学習理論構築へ向けた学習過程そのものの理論構築へとつなげていくことを目標 とする.もう一つは大学院における「カリキュラムデザイン概論」および「授業デザイン概論」において恒常的にシステムを実装する(平成26年度前期開講).両授業は教員を目指す大学院生(25名程度)に対して開講している修士課程1年生の必須科目である.授業の多くは協調学習形式でなされているため,開発したシステムを実装し,システムの改修を推進する.同科目は平成25年度にも開講されているため,平成25年度のシステム開発には同授業での実践を基にシステム仕様を決定する予定である.また「カリキュラムデザイン実習」(平成26年度後期開講)においても同システムを実装予定である. 本研究におけるシステムは学習者を支援すると同時に教師支援も視野に入れている.そのため,システムを導入し将来の教師であり現在は大学院生である学生に対し振り返りを支援しシステム開発を進めていきたい.
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