本研究は協調的な学習場面における学びの過程と,そこでのグループやクラス全体で起きている社会的な相互作用の過程を学習者と教師が振り返るための支援システム(SeVIT)を開発した.平成26年度は開発したシステムの改修をさらに進め,実践の中での利用を試みた.また過去の蓄積されていた学習過程のデータを利用し,教師の支援が可能かどうかについても検討した. 本研究で開発したシステムを利用し,山田ら(2015)では大学生が卒業論文制作までに,誰といかなる課題に取り組んだかという選択プロセスを可視化した.結果,多様な仲間と多様な課題について学習し,自身の興味関心に従ってテーマを選択したほうが教員からの評価も高いことが示唆された. 本研究によって,以下の3つの示唆が得られた.①教師が日常的に拠って立つ経験則の確認あるいは見直しを行い,学習者に支援するか否かの判断がしやすくなる可能性が見いだされた.また,②協調学習において教師がグループについて,「人」ではなく学習者の取り組む「課題」に着目し,その学習過程の可視化などによって経過を観察し適宜支援することが望ましいことが示唆された.これらの実践研究より,本研究で開発したシステムが有する学習者の選択した課題や仲間,それぞれの興味関心を多重的・多層的に時間的推移も含めて表示し,一人ひとりの移動軌跡を可視化するグラフ表現が,学習者の「選択」の大量の学習過程のデータを教師が振り返り,次の実践を修正できるようなシステムの要件として有効だと考えられた.
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