研究課題/領域番号 |
25730208
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
木下 英明 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30637749)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インプラント / 骨質 / シミュレーション教育 / 有限要素解析 / シミュレーター / 力覚 / マイクロCT / 偶発症 |
研究概要 |
失われた歯に対する治療法の1つとして、インプラント治療が広く普及している。インプラント治療とは顎の骨にドリルで穴をあけてそこにインプラントと呼ばれるチタン製の人工歯根を埋入することで実際の歯に遜色のない噛み心地を回復できる治療法である。インプラント手術においては顎の骨にドリリングを行うが、骨の硬さや量は人によって様々であるため、入念な治療計画の立案と十分な訓練が不可欠である。また、特に下顎においては骨の内部や周囲に重要な血管や神経が走行しており、解剖学的な構造物を理解する必要がある。今回の研究において開発した力覚体感型インプラント手術シミュレーターはインプラント手術におけるドリリング時の力覚を数値化し、反復練習を可能にするツールである。平成25年度においては、東京歯科大学解剖学講座所蔵の新鮮遺体を用いたドリリング時の反力測定を行った。口腔インプラント学講座の協力の元、ドリリング時の垂直方向の荷重を数値化してシミュレーターの動作に反映することができた。また、マイクロCTベースの3次元的な顎骨のモデルを作製し、歯科医師による使用感の評価を行った。その結果、ドリリング時の力覚について体感可能であることが示唆された。ソフトウェアおよび評価ツールとしてはタブレットPC上で操作可能な解析ソフトを開発し、シミュレーター使用後の評価用ツールとして使用していく。外部入力装置としてはSONY製のヘッドマウント型ディスプレイに実際の手術時の映像を投影させ、シミュレーター使用時の臨場感の向上に努めた。平成26年度は、以上の成果を統合させるとともに、インプラントシミュレーターの教育現場での使用を目指して改良を加えていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)新鮮遺体を用いたドリリング時の反力の測定は、東京歯科大学の倫理委員会の承認を得た後、現在1体両側の測定が完了している。測定には東京歯科大学口腔インプラント学講座の協力を得た。 (2)データベースは東京歯科大学解剖学講座所蔵の乾燥頭蓋骨の下顎臼歯部をマイクロCTにて撮影を行い、3次元有限要素モデルを作製した。現在4体のデータベースを元に研究を進めている。 (3)力覚体感装置本体は改良を重ね、初期のモデルと比べると小型化が進んでいる。また、PCとの連繋が可能となりPCから直接プログラムを選択し、装置を稼働することができるようになった。使用感の評価においては口腔インプラント学講座の医局員に協力していただき、現在7名の歯科医師による評価が完了している。 (4)株式会社くいんとの協力の元、タブレットPC専用の術後評価ソフトウェアの試作品が完成した。インプラントシミュレーターへドリリングした力覚および顎骨の解剖学的構造物を、タブレットPC上にて簡便な操作で学習可能なコンテンツとなっている。 (5)HMDと3Dビデオカメラを購入し、口腔インプラント講座にて実際のインプラント手術の術者目線の3D映像の作製を行っている。ハードウェアの比較としては、SONY製のHMDとEPSON製のHMDを比較したところ、インプラントシミュレーター使用時に外部の状況が確認できるようにシースルータイプのEPSON製を採用することとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)新鮮遺体を用いたドリリング時の反力については平成26年度においても引き続き測定数を増やしていく予定である。今年度内に3体の追加を目指す。(2)データベースに関しては様々なタイプの3次元有限要素モデルを作製する必要があるため、平成26年度においても引き続きマイクロCT撮影とモデル作製を進めていく。目標モデル数は20である。(3)力覚体感装置本体より小型化を目指し、14インチ程度のノートPCの底面に設置するような卓上型のサイズ化を検討している。また、PCの連携により、学習者が一人でも使用できるようなデータベース検索ソフトを作成する必要がある。使用感の評価に関しては東京歯科大学平成26年度第5学年の学生の実習に取り入れることで、教育効果についての検証を行っていく予定である。 (4)タブレットPC専用の術後評価ソフトウェアは操作感がメモリ数に依存するため、よりシンプルな立体画像構築について検討していく必要がある。 (5)外部映像装置はシミュレーター本体との画像のリンクを目指すが、実際の手術の映像では不可能なため、映像コンテンツの作製が必要となってくる。 また、今後はインプラント手術シミュレーターの海外進出を目指し、国外の著名な骨関連の研究室と共同研究の締結を目指す。我々の研究内容をプレゼンするために海外の学会や研究室への訪問を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文および学会発表用の抄録の翻訳が、発注日から請求日が年度を跨いだため次年度使用額が発生した。 平成26年度の英語論文校閲および研究成果投稿料に使用する予定である。
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