最終年度においては、前年度に引き続きドリリング時の力覚データベースの増補に努めた。東京歯科大学解剖学講座所蔵の乾燥頭蓋骨の下顎臼歯部をマイクロCTにて撮影を行い、3次元有限要素モデルを作製した。これらのデータを基にドリリング時の反力値をシミュレーター上に反映させた。サンプルは、正常な位置へドリリングが完了したものと、偶発症として舌側皮質骨穿孔および下顎管穿孔という状況を再現したFEモデルを作製した。これらのモデルをシミュレーターへ反映させたものを用いて、当大学の第5学年臨床実習生を対象にインプラントシミュレーターを用いたドリリング時の力覚についての体感学習を行い、使用感および学習項目の理解度の調査を目的としたアンケート調査を行った。従来の模型による実習を行った後、シミュレーターの構成、使用方法およびFEモデルの概要を説明した後、各自で自由に演習させた。自由演習には下顎管の1mm上方の深さまでドリリングする状況を再現した3つのモデルを用いた。自由演習の終了後に、舌側皮質骨穿孔モデルを演習させ、成功事例とのドリリング時の力学的な差異に気付くことができるかの確認を行った。アンケート結果から、インプラントシミュレーターの実習を通じてインプラント手術時の骨の状態の個体差や偶発症に対する理解の向上が認められることが示唆された。上部皮質骨を穿孔して海綿骨領域に入った瞬間の感覚や。舌側皮質骨穿孔前の異変に気づくことができ、擬似体験による経験知を積むことができると期待される。
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