従来の知識伝達型の学習観に対し,学習者が自ら知識やスキルを学ぶことが重要視されている構成主義的学習観が注目され,学習に使用する道具や環境などの外的表象を含めた研究が取り組まれてきた.そのなかで協調学習の質を決める学習者間のインタラクションに着目し,対話による知識構築プロセスのモデル化と支援に関する研究が数多くなされてきた.本研究では直接対面環境を対象に,議論の進行を良い方向へ導く支援技術を開発することを目的とし,実施した. まず実世界指向の対話状況取得インタフェースと情報提示インタフェースを開発した.対話状況取得のために,音声認識技術とRFIDセンサー技術を用いて,各ユーザの発話内容や発話中に利用した学習資料を特定し,それに含まれる単語集合と遷移時系列を実時間で検知できるようにした.そして,各ユーザが対話学習を促進する情報を提示するために,対話状況と事前学習で用いた学習資料との関連度を算出し,その結果を順位表示できるようにした.評価検証では開発技術の機能性と有効性を確認するために,4人組の対面型協調学習のなかで本システムを利用した場合と利用しない場合を比較する実験を行い,各機能が対面型協調学習のなかで適切に機能できることと,対話状況に応じた学習資料の活用を促進させ,活発で満足感の高い議論となることが確認された. さらに,これまでの知見をもとにした実践的環境として,事前学習で得られた学習資料の観点の相違を把握し易くする表現を生成し,議論のなかで提供するWebシステムを開発した. 創造的問題解決を扱ったプロジェクト型授業のなかで使用する実験を行った.その結果,本システムは,協調学習に必要なコミュニケーションの齟齬を解消し,議論の充実や満足を高めることに有効であることがわかった.
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