本研究では判断ミスの可能性を下げるため、アンサンブル系を構成する手法を解析した。具体的には、思考型ゲームの枠組みにおいて、アンサンブル系(複数のプログラムの思考をまとめて一つの答えを出す系)を構成することにより着手を安定化し、突拍子もない悪手を指す確率を抑えることを目指した。 【一年目】詰将棋及び詰め碁ソルバーの高速化に一定の成果が見られた。現在のソルバーは証明・反証数の概念を用いて効率のよいヒューリスティック探索を行う。各ソルバーの多様化は、この証明・反証数に小さな乱数値を足すことにより達成された。多様化された8個のソルバーからなるアンサンブル系を構成することにより、平均して20%程度の探索時間の短縮が確認された。この成果はジャーナル論文誌 ICGA Journal にて発表した。 【二年目】チェス思考エンジンの高性能化に一定の成果が見られた。現在の思考エンジンはalpha-beta探索とヒューリスティック評価関数を用いて次の一手を求める。このような alpha-beta 探索を行う思考エンジンを複数用意して多数決等の簡潔なアルゴリズムにより思考結果を集計して、思考エンジンの強さ向上が確認された。この成果はジャーナル論文誌 Journal of Information Science and Engineering にて発表した。 【三年目】チェス、将棋、囲碁に加えて、二人ゲームのトラックスとスタークラフトの人工知能に関して調査を行った。アンサンブル系を構成するまでには至らなかったが、それぞれのゲームで、2016年のゲーム情報学研究会と、国際学会 ACIT2015 にて、思考エンジンの効率化に関する研究成果を発表した。
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