研究課題/領域番号 |
25740005
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サンゴの石灰化 / 沿岸汚染 / 地下水 / 栄養塩 |
研究概要 |
本研究では、硝酸塩やリン酸塩などの栄養塩がコユビミドリイシサンゴ(Acropora digitifera)のポリプの初期骨格形成に与える影響を検証すると共に,沖縄本島南部の石灰岩分布地域において,地下水経由で供給される栄養塩濃度が沿岸海域における海水中の栄養塩濃度に及ぼす影響の把握を試みた. サンゴのポリプの初期骨格形成実験では,石灰化面積比の平均がコントロールでは63.2%であったのに対し,Na2HPO4 1µMで20.4%,50 µMで1.5%と有意な阻害がみられた。しかし,NaNO3 10 mMでは38.7%で有意差は見られなかった.以上の結果,サンゴのポリプの初期の骨格形成の阻害は,硝酸塩に比べリン酸塩の影響が大きいことが明らかになった.次に,沖縄本島南部地域における地下水調査の結果,調査地域のNO3--Nは,名城エリア,米須エリア,仲座エリアで,それぞれ5.0~17.0 mgL-1,LOQ(定量下限:0.033 mgL-1以下)~24.8 mgL-1,4.4~12.0 mgL-1の範囲に分布しており,平均値は,それぞれ13.1 mgL-1,8.0 mgL-1,9.21 mgL-1となっていることが確認された.しかし,いずれの濃度の,上述したサンゴのポリプを用いた活性試験に使用した硝酸濃度に比べても十分少ない値である.PO43-は0.02~1.55 mgL-1(0.21~16.3µM)の範囲に分布しており,平均値は0.21 mgL-1(2.2 µM)となっていた.一方,調査地域沿岸のO海岸における海水中のPO43-の濃度は,0.02~0.26 mgL-1(0.2~2.9 µM)の濃度に分布しており,海岸から地下水が湧出している付近では比較的濃度が高く,礁池外の海水は比較的低くなっていた.サンゴの回復がみられる沖縄本島中部のO海岸における海水中のPO43-の濃度は0.04~0.05 mg L-1(0.4~0.5 µM)であった.以上の結果を勘案すると,地下水経由で沿岸海域に輸送されているリン酸塩は,サンゴのポリプの初期の骨格生成に影響を与えていると推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年~H26年における研究目標は,海洋生物の新たな石灰化機構を提唱しこれを証明していくために、(1)陸域の地下水及びサンゴの生息する礁池内外の海水中の栄養塩類を継時的にモニタリングすると共に、定期的に採水した海水を用いて,(2)ポリアミンを用いた炭酸カルシウムの形成が可能かどうかの判定試験を実施する.また,その判定結果と石灰化生物との関連性を検証するため,(3)円石藻とサンゴ幼生を用いた生物活性試験、(4)サンゴや有孔虫等の石灰化生物の分布状況調査を研究協力者と共に実施するとしていた.そのうち,(1)及び(3)においては一定以上の成果が得られたものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,上述した(1)~(4)を遂行していくと共に,H25年次に得られた成果を基に学術論文をまとめ投稿し,3年目のまとめにつなげていきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
発注確定したノート型PCの納品が当該年度内に間に合わなかったため 現場での調査や実験のデータ入出力やその整理に持ち運び可能なノート型パソコンを使用する
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