研究課題/領域番号 |
25740005
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
安元 純 琉球大学, 農学部, 助教 (70432870)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サンゴ礁海域 / 地下水 / 栄養塩負荷量 / サンゴへの影響評価 |
研究実績の概要 |
本年度は,沖縄本島南部地域の米須地下ダム流域において,本流域における栄養塩の物質収支の推定を試みると共に,海域へ地下水経由で流出する栄養塩(リン,窒素)負荷量を算定した。くわえて,サンゴのポリプを用いた生物活性試験を,昨年度同様,実施し,栄養塩がサンゴの骨格形成に及ぼす影響を検証した。 調査地域の土地利用状況(2011年)における農耕地面積660haで,肥料の年間施肥量は,リン及び窒素それぞれで,36.6t/year,161.1t/yearとなった。一方,調査地域における家畜由来のリン及び窒素の年間発生量はそれぞれ,130.20t/year,227.42t/yearと算定された。地下水調査から得られた調査地域における地下水中の溶存態窒素(NO3--N)及び溶存態リン(PO43--P)の平均値は,それぞれ,8.29 mg/L,0.530mg/Lであった。次に,調査流域において地下水流動解析を実施した結果,調査地域における地下水貯留量は3.6×107m3,海域への地下水流出量は3.7×104m3/dayと推定された。 以上より,調査地域の地下水中に溶存している栄養塩量は,PO43--Pが1.9t,NO3--Nが302.3tと推定され,リン及び窒素の全負荷量(肥料+家畜)に対して,それぞれ,1.1%,78%に相当した。また,海域への地下水経由の栄養塩負荷量は,PO43--Pが0.7t/year,NO3--Nが112.4 t/yearと推定され,リン及び窒素の全負荷量に対して,それぞれ,0.4%,29%に相当した。 サンゴのポリプを用いた生物活性試験から,石灰化面積比の平均がコントロールでは63.2%であったのに対し,Na2HPO4 1µM(PO43--P:0.003 mg/L)で20.4%,50 µM(PO43--P:0.155mg/L)で1.5%と有意な阻害がみられた。しかし,NaNO3 10mM(NO3--N:140 mg/L)では38.7%で有意差はみられなかった。以上の結果,サンゴのポリプの初期の骨格形成の阻害は,硝酸塩に比べリン酸塩の影響が大きいことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究で目標としていたサンゴ礁海域への地下水経由の栄養塩負荷量を推定及びサンゴへの影響評価がある程度達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策としては、還元的環境下で溶出してくるリンを始め、リンが沖縄の代表的土壌や琉球石灰帯水層中でどのような吸着形態で存在しているのかを解明することを目的に、各種形態別リン(Ca型リン・Al型リン・Fe型リン・有機態リン等)の定量を試みる。また、室内カラム試験を実施し、畑地土壌の持つ各種形態リンの土壌への吸着容量を把握し、土壌中から帯水層へのリンの輸送特性の把握を目指す。さらに、琉球石灰岩帯水層に存在する浮遊懸濁物質に吸着しているリンの輸送特性を把握し、現在推定されている地下ダム流域におけるリンの物質収支の算出結果の高精度化を目指すこととする。
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