研究課題/領域番号 |
25740006
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
小林 祥子 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 助教 (10537103)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インドネシア / 植林地 / マイクロ波 / ALOS/PALSAR / 四成分散乱モデル分解 / 多偏波 / 森林 / アカシア林 |
研究概要 |
インドネシアの大規模植林地において、アカシア林の植生状態・林層の変化をモニタリングすることを目的とし研究を行った。 2007年から2010年までのALOS衛星PALSARセンサ取得のポーラリメトリデータを用いて経年変化解析を行うため、まずは、4成分散乱モデル分解手法を適用(Singh et al. 2013)し、衛星により取得された偏波情報を表面散乱・体積散乱・二回反射散乱・ヘリックス散乱の4つの散乱電力に分解、森林測定データ(胸高幹直径・樹高・幹体積)との相関解析を行った。解析の結果、森林の成長に伴い、裸地が減少するために表面散乱は減少、森林キャノピー(林冠)の成長に伴い、体積散乱・ヘリックス散乱が増加、同時に、樹高・幹直径の増大に伴い、二回反射散乱が増加傾向を示すことが、複数年のデータ解析より明らかとなった。 さらに、2007年から2010年までの散乱電力の年々変化と現場調査による林分の状態を記した記録データとの比較により、相関解析では解明できていなかった林層構造の変化(森林の成長・下層植生の出現・生物学的ダメージによる森林劣化)を捉えることに成功した。マイクロ波衛星データの年々変化解析の結果は、植林会社の記録データと一致しており、ALOS/PALSARデータを用いた森林モニタリングの可能性を明確に示したと言える。 「地上観測データとマイクロ波の電力分解によって得られる散乱成分の突き合わせ」による本解析により、アカシア植林地における林層構造・森林の状況をある程度把握できることが明らかとなった。今後、ALOS2の打ち上げも予定されており、PALSARデータ(フルポーラリメトリ)の有用性を示したことで、植林地における衛星データの利用の裾野を広げ、さらには産業植林の持続的利用という新たな環境課題へ取り組む端緒を開くと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地上観測された幹体積と、それを「物理的に反映するはずの2回反射散乱」間の十分な強い相関が得られていない問題の原因が、当該年度のデータ解析、および現場調査によりおおよそ明らかとなってきた。つまり、ダメージのない林分においては下層植生の出現により、理論的に幹体積を示す「2回反射散乱」が減少、一方、生物学的ダメージがある林分においては、林冠が縮小し「2回反射散乱」が増加傾向を示す。 さらに、これまで明らかとなっていなかった森林構造の変化に対するマイクロ波衛星データのレスポンス(後方散乱の変化)のパターンが、経年変化解析により見えてきたことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において明らかとなった散乱メカニズムの理解に基づき、アカシア植林地における幹体積推定手法の開発を進める。さらに、実際の木材生産量との比較により、解析手法の有効性を検証・検討する。 また、これまでの散乱メカニズムに関する知見を踏まえた上で、ユーカリ植林への転換が行われている当サイトにおいても継続的に研究を進め、今後の植林地の長期的モニタリングへの準備を進める。そのため、ALOS2(2014年度打ち上げ予定)の偏波データ解析に着手する準備として、①ALOS2データの取得、②幾何補正を含めた衛星データの前処理、③地上観測データの収集・処理を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度においては、衛星データ解析が進んだことからコンピュータ解析を優先して研究を遂行したため。 次年度においては、データ解析に加え、乾季の時期における長期間の現地調査を行う予定である。
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