研究課題/領域番号 |
25740010
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
谷保 佐知 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (00443200)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有害化学物質 / 地球温暖化 / 環境分析 / 北極海海氷消失 |
研究概要 |
MR13-06航海に参加し、北極海カナダ海盆、ボーフォート海、チャクチ海、ベーリング海、北部北太平洋で表層海水、深層海水および海氷の採取を行った。深層海水試料はCTDロゼッタ採水(ニスキン)を用い、表層から深層まで、15 層前後を各1リットル採集した。また同時に「大気試料低温捕集装置」をコンパスデッキからの大気捕集用配管と接続し、航路中の非汚染大気の採集を行い、スペシメンバンクの充実化を図った。 採取した水試料分析は申請者が開発した国際標準分析法ISO25101 に準じて固相抽出・液体クロマトグラフタンデム質量分析計を用いて行った。しかし、PFBAなど一部の短炭素鎖のPFASsについては、ISO25101の固相抽出法を用いると、海水試料からは十分な回収率が得られなかった。そのため、一連のPFASsについても十分な抽出効率が得られる新たな固相抽出カートリッジを開発し、海水試料についてはこの方法を用いて分析を行った。 その結果、北極域の海水は南極域の海水にくらべ、PFASsが数倍から数十倍高濃度で存在することが分かった。また大気試料中の揮発性を有するPFASsを測定するため、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計を用いた分析法の開発のための、測定条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MR13-06航海では当初の予定通りに、表層海水、深層海水、海氷および大気試料の採取を行い、スペシメンバンクを充実化することができた。 一方、対象分析成分である一部のPFASsについて、海水試料の抽出方法は当初予定していた固相抽出法をそのまま適用できない場合があった。そのため、まずその抽出方法について検討を行い、海水試料にも適用可能な高感度高効率の抽出方法を開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
MR13-06航海と同様の調査航海(MR14-04およびMR14-05航海)に参加し、北極海周辺試料を再度採集し、海氷・氷河生成過程での有害化学物質取り込み現象を定量的・時系列的に再構成する。海氷・氷山の生成過程は現在でも完全には解明されていないため、多数の試料を分析し、現象理解に適した試料を得る必要があるが、初年度に行う国際スペシメンバンク分析による時系列変化の推測(採集時期の異なった試料から得られた時系列変化)と、海氷・氷山の層別分析(最近採取した同一試料内での時系列変化)を比較する事で、より信頼性の高い汚染経緯の歴史的再構成が可能になると期待できる。 特に最近の成果としてスバールバル諸島で採集したアイスコア中のPFOS 関連物質の時系列変化が明らかになっている。これと本提案で得られる分析データを比較する事で北極海太平洋側と大西洋側の比較解析も可能になる。以上の研究により、POPs/PFOS 類の全球動態データの蓄積と海氷・氷河融解現象による有機汚染物質の再放出現象を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
対象分析成分である一部のPFASsについて、海水試料の抽出方法は当初予定していた固相抽出法が適用できない場合があったため、まずその分析方法についての検討を行い、海水試料にも適用可能な高感度高効率の抽出方法を開発することができた。抽出方法の開発により重点をおいたため、海水試料の分析数が当初予定よりも少なくなったため。 開発した新たな固相抽出法を用いて、海水試料の分析数を増やし、北極海におけるPFASsの環境挙動の解明につなげる。
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