本研究は、高速フラッシュ励起蛍光法(FRR法)を利用して、貧栄養の熱帯・亜熱帯海域でよく見られる藻類と原生動物の細胞内共生関係を明らかにするものである。本研究は、平成25 年度から3年間の計画で、(1)FRR法を用いた共生藻の光合成測定方法の確立、(2)原生動物の細胞内にいる共生藻の光合成能力の定量的評価、(3)共生藻の光合成能力の変動要因の探索、(4)共生藻が宿主原生動物の生存・生育に及ぼす影響評価、の4つの研究項目に取り組む。 最終年度である本年は、研究全体のまとめを行うとともに、これまでに測定した結果の解析を進めた。藻類と有孔虫の関係では、FRR法で測定した共生藻の光吸収効率の結果から、光吸収効率の高い共生藻をもつ有孔虫ほど、有光層下部まで広く分布していることを新たに明らかにした。この結果は、宿主である有孔虫の生息深度に共生藻が関与することを示唆している。さらに、本年、もう一つの主要な浮遊性原生動物である放散虫の共生藻の光合成能力をFRR法で測定することに取り組んだ。放散虫は、有孔虫に比べて体サイズが小さいため、FRR法による測定が困難であったが、装置を改良することでその測定に世界で初めて成功した。また、放散虫の体内に含まれる共生藻は、有孔虫に比べて、その生物量は一桁以上少ないが、高い光合成活性をもつことが明らかとなった。本研究により、海洋での共生という生存戦略に新たな知見を与えることが出来た。
|