研究課題/領域番号 |
25740015
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究所 |
研究代表者 |
浅川 大地 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (80470251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エアロゾル / 腐植様物質 / 多環芳香族炭化水素 / PAH / ニトロ化 |
研究実績の概要 |
本研究は、大気エアロゾルに含まれる腐植様物質と多環芳香族炭化水素類(PAHs)との相互作用の解明を目的としている。腐植様物質の構造特性に着目し、相互作用メカニズムの解析を行うことが特徴である。本年度は、(1)エアロゾル捕集器の改良と腐植様物質の採取、(2)腐植様物質粒子とPAHsとの相互作用試験を行った。 先ず、腐植様物質の大量採取に利用するために昨年度製作したサイクロン型エアロゾルサンプラーを改良した。既製品のステンレス配管を組み合わせて、安価なサンプラーを設計した。改良したサンプラーの50%カットオフ粒径は約0.4μmであり、粒径2.1μm以上の粗大なエアロゾルの約90%と粒径2.1μm未満の微小な粒子の約60%が捕集できた。このサンプラーと昨年度製作したサンプラーを併用してエアロゾルを継続的に採取した。 次に、腐植様物質とPAHsの相互作用を調べるために、チャンバー実験を行った。シリンダー型チャンバー(容積442 L、比表面積7.3 m-1)を製作し、腐植様物質の粒子化には超音波型の粒子発生装置を使用した。腐植様物質水溶液とNaCl水溶液から発生させた粒子をチャンバーに導入したところ、NaCl粒子は主に粒径1.1μm未満に存在し、腐植様物質粒子は主に粒径1.1-4.7μmに存在した。チャンバーにPAHsを導入して粒子態PAHs濃度を測定すると、NaCl粒子存在時よりも腐植様物質粒子存在時の方が一部PAHsの濃度が高かった。したがって、腐植様物質粒子にPAHsが収着していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、チャンバーを製作して腐植様物質とPAHsとの相互作用試験を行った。ただし、粒子態とガス態のPAHsを測定することを予定していたが、ガス態のPAHsは未測定である。ガス態PAHsの測定には、チャンバー実験時の空気流量を勘案して捕集材などを検討する必要がある。また、チャンバー実験によるPAHsの回収率が低いことが課題として残ったので、次年度以降、チャンバー実験条件の最適化を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
腐植様物質粒子とPAHsの相互作用試験を実施したが、PAHsの回収率が低かった。これは、粒子態PAHsしか測定していないためにガス態PAHsを評価できていないことと、チャンバー内壁への吸着(wall loss)などが影響していると予想される。そのため、ガス態PAHsの測定とwall lossの評価、さらにPAHsの導入方法の再検討を行って、PAHsの回収率を向上させる。なお、ガス態PAHsの捕集には、過去の研究例を参考にして、ポリウレタンフォームを捕集材にすることを予定しているが、チャンバー実験の空気流量などを考慮した最適化が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用したが、約1万円の残金が生じた。残金と同額の購入希望物品がなかったため、次年度に繰り越して使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として使用予定。
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