研究課題
放射線も抗がん剤もDNAに傷をつけることで、がん細胞を死に導く。しかし、細胞にはDNA修復能力を持つので、DNA修復が正常であれば、ある程度の損傷に対しては耐性となる。がん細胞はゲノムの欠失や変異のため、しばしばDNA修復に欠損がある。 DNA修復に関わる遺伝子の機能を明らかにすることで、抗がん剤の効果を高める戦略を立てることが可能となる。研究者は放射線や、ある種の抗がん剤で生じるDNA断端の修復酵素TDP1 (tyrosyl-DNA phosphodiesterase)の機能について昨年報告した。本年度は、研究者が留学中の2012年に報告した、PARP阻害剤の新規抗がんメカニズム(PARP-DNA複合体形成)について、研究を発展させた。PARP阻害剤はDNA修復因子としてのPARPの酵素阻害による抗がん作用をもつ、と考えられていた。しかし、我々が5種類の臨床で使用されているPARP阻害剤について検討したところ、酵素阻害活性はほぼ同等であるにも関わらず、抗がん効果に1,000倍以上の差があることに気づいた。この差が生まれるメカニズムは、PARP阻害剤の種類により、PARP-DNA複合体を形成する作用が大きく異なるからであった。申請者らの発見により、PARPの酵素阻害活性では説明のつかなかった、PARP阻害剤間の効果の違いを明確にできた。 また、この発見を元に、合理的なPARP阻害剤の他剤併用両方についても研究したところ、これまで相乗作用が知られていたPARP阻害剤+トポイソメラーゼ阻害剤、PARP阻害剤+テモゾロマイドについて、相乗作用のメカニズムが異なる事を明らかにした。アメリカ国立衛生研究所との共同研究により、CCLE, NCI60といった、がんビックデータベースを用いて、耐性に関わる遺伝子を探索し、一つの遺伝子の同定に至った。現在その遺伝子の機能を鋭意研究中である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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