研究課題/領域番号 |
25740020
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
成田 あゆみ 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 産総研特別研究員 (50633898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DNA損傷過程 / 自己組織化単分子膜 / 生体分子固定化 / 酸化物表面 / 軟X線 / X線吸収微細構造法 / X線光電子分光法 / 放射光 |
研究実績の概要 |
DNAの放射線損傷の生成メカニズムは、生物学における大きな未解決課題である。現在までにこの研究課題に関して多くの研究が行われており、近年ではDNAを構成する元素の内殻電子が励起・イオン化する領域のエネルギーを持つX線を照射すると、特定の損傷の誘発量が顕著に変化することが明らかにされている。しかしながらこれは無機基板上に直接DNA薄膜を作成した場合の結果であり、多くのたんぱく質や体液と相互作用し存在している生体内のDNAの状態を再現しているとは言い難い。そこで本研究では、無機基板の上においてDNAを生体内の状態に近づけるために、自己組織化単分子膜(SAM膜)を利用することを提案し、研究を遂行している。SAM膜とは、表面と分子の相互作用により分子が自発的に形成するある規則性(配向)をもった機能性分子膜の一種である。SAM膜を無機表面とDNAをつなぐアンカー材料として用いることで、無機表面に生体内の電気化学的環境を模擬することができると考えられる。また生体内環境を再現することによって、X線照射の結果放出される電子の定量およびその損傷生成への効果なども直接観測することが可能になり、DNA損傷において重要な役割を果たしているこれらの二次電子の影響も明らかにすることができると期待される。 平成26年度は、照射実験に関する条件検討に注力した。無機表面上にSAM膜を介して固定化した一本鎖DNAであるオリゴヌクレオチド(OGN)に対して、大強度放射光施設SPring-8において照射実験を行った。照射前と後のOGN分子の放射光分光測定結果より、その化学状態が異なることを明らかにした。同時に今までに得られた成果を国内外の学術会議において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は照射実験の条件の確立を目指し実験を行った。具体的には照射するX線のエネルギーの決定、測定する元素の選定、損傷を評価するための測定手法の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、放射光ビームタイムでの実験を継続することと並行して、得られた成果を精力的に国内外の学術会議において発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に購入予定であった実験装置に関して、研究代表者の所属変更に伴い、所属変更先に購入予定の物品の代替品があり使用できる状況にあったため、購入を見合わせた。また、当初の予定よりもビームタイム実験の回数が減少したので旅費が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
自己組織化単分子膜作成のため、基板の前処理として行っているオゾン洗浄器を購入予定である。また研究成果発表のために国内会議だけでなく国際会議にも積極的に参加し、その旅費として使用予定である。
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