研究課題/領域番号 |
25740021
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
漆原 あゆみ 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80391275)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非DSBs型クラスターDNA損傷 / 遺伝的不安定性 / 染色体異常 / 紫外線 / 細胞周期 / 生物影響 |
研究概要 |
電離放射線により誘発される遺伝的不安定性は、放射線の被ばくにおいて深刻な問題である放射線発癌等の長期的な影響に関与するが、その誘発気候は解明されていない。申請者はこれまでに、DNA二重鎖切断(DNA Double-strand breaks;DSBs)修復機構の欠損によって生成する不完全なDSBs修復産物を有する細胞において、遺伝的不安定性の誘発が亢進されたことから、非DSBs型DNA損傷による細胞の不安定化の可能性を調べる為、非DSBs型DNA損傷を細胞に導入した。その結果、非DSBs型DNA損傷の導入は、細胞に対して染色体異常や核型の異常といった遺伝的不安定性が誘発する事を明らかにした。しかし、非DSBs型DNA損傷によって遺伝的不安定性が誘発される事は示されたものの、その誘発過程は未だ不明である。本研究は、癌細胞の悪性度にも県警する染色体の数的な異常である核型異常に着目し、非DSBs型クラスターDNA損傷によって誘発される核型異常の誘発機構解明を目的とする。 本研究は、放射線いよる生物影響の中でも、高感度の検出が可能な染色体異常に着目し、非DSBs型クラスターDNA損傷によって遅延性染色体異常の生成及び、細胞分裂制御機構の破綻の解明を目的とする。すなわち、非DSBs型クラスターDNA損傷の細胞への導入により、引き起こされる染色体数の異数化と多倍数体化の誘発機構の解明に重点を置き。染色体の異数体化を起こしている癌細胞との関係を明らかにする事を目指す。そのために、非DSBs型クラスターDNA損傷の残存が核型異常の原因となるのか、あるいは細胞内の修復機構を始めとする各種細胞応答の異常が原因なのかを明らかにし、非DSBs型DNA損傷による細胞分悦制御や細胞周期の制御への影響の詳細を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度の途中で前所属研究機関を退職したことにより、現在の所属先に研究拠点を移した。これによって、研究環境等を含む実験結果の再現性の確認等を行う必要が生じた。そのため、当初の研究計画には含まれていなかった研究拠点の移動とそれに伴う再現実験等により、研究計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、非DSBs型クラスターDNA損傷が細胞内環境に及ぼす影響の解析を行う。DNA損傷修復機構の存在が、UV-A照射染色体の移入により誘発される遺伝的不安定性に対して及ぼす影響を調べる。UV-A照射染色体を移入した修復機構欠損細胞に対して、遺伝的不安定性の誘発を調べる。解析は、 染色体異常、及び核型の異常を指標として行う。 また、非DSBs型クラスターDNA損傷による細胞分裂制御機構への影響を調べる。染色体の増減による異数体化は、細胞分裂時の染色体の不均一な分配、あるいは、多倍数体化した細胞から染色体が欠落して起こるため、染色体の欠落や不均一な分配には、中心体の機能異常や染色体の動原体の異常・不活化 による紡錘糸形成異常や、中心体複製異常による多極分配等が関与していると考えられる。そこで、非DSBs型クラスターDNA損傷が細胞分裂の制御機構に及ぼす影響を調べる。解析は、蛍光免疫染色法によって、中心体の複製及びその機能、あるいは紡錘糸の形成等について正常に行われているのかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属研究機関が日本原子力研究開発機構から大阪府立大学に移った事に伴い、研究計画に遅れが生じた。そのため、当初予定していた研究目標に到達する事が出来なかったため、行う事の出来なかった実験にかかるはずであった物品費の残額が生じた。 当該年度で到達出来なかった研究目標は、次年度(26年度)に行うものとする。また、研究目標の遅れを踏まえて、研究計画を変更し、より直接的なアプローチによる解明を試みる事とする。
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