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2013 年度 実施状況報告書

乳がん細胞におけるビスフェノールAのエストロゲン様活性増強の分子メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 25740024
研究種目

若手研究(B)

研究機関九州大学

研究代表者

劉 暁輝  九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60596849)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードビスフェノールA / エストロゲン様作用 / 核内受容体 / 生理活性 / 乳がん細胞
研究概要

本研究の最大の目的は、乳がん細胞においてビスフェノールAがエストロゲン受容体α(ERα)とエストロゲン関連受容体γ(ERRγ)の協働作用による増殖作用を示すメカニズムを分子レベルで解析し、解明することである。
平成25年度は、(1)MCF7、T47D、MDA-MB-361細胞の3種乳がん細胞において、内在性のER2種、ERR3種の遺伝子発現量の解析に成就した。いずれの細胞にもERαは多量に発現、ERRαとERRγの発現はわずか、ERβとERRβは非常に低発現であることが分かった。また、転写共役因子4種について、SRC1は多く発現し、SRC2は中程度で、pGC1α、pGC1βは低発現していることが判明した。(2)T47D細胞に10 nMのBPAおよびE2を暴露させると、ERβとERRβの発現量が上昇することが判明した。ERα、ERRαとERRγの発現量は減少した。二つの集団を分別する要因の存在が示唆された。(3)MCF7細胞にERsとERRs受容体の各発現プラスミドを導入し、BPA暴露による活性変化を調べたところ、ERα、ERRα、ERRγの発現はBPA活性を増強した。一方、ERβ、ERRβ発現は活性を抑制した。(4)化学物質E2、BPA、BPAF、BPC、HPTEをMCF7細胞へ暴露し、WST-1アッセイにより細胞増殖効果を解析したところ、いずれも約2倍の増殖作用を示した。(5)ERα/ERRα、あるいはERRγ発現系によるBPA活性増強の分子機構の基盤を解明するために、これらの変異受容体を発現し、レポーター遺伝子アッセイにより解析した。その結果、BPAのエストロゲン様活性はBPAがERに結合して発揮されること、また、ERRα、あるいはERRγは協働的に作用し、これらへのBPA結合無しに増強されることが明らかとなった。(6)ER/ERRの協働作用を示す応答配列の実態を調べるため、EREを複数、あるいはEREとERREを一つずつ含む天然型応答配列の作製を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度では、3種の乳がん細胞において、E2暴露およびBPA暴露の有無で内在性9種類の受容体の遺伝子発現量の変化解析に成就した。さらに、ERおよびERRの一過性発現によるBPA活性の増強、あるいは抑制する場合のあることが判明した。そして、乳がん細胞増殖試験により、BPAが乳がん細胞増殖作用を示し、それがERを介していることが明らかとなった。また、BPAが活性増強のために結合する受容体はERであることが判明した。一方、応答配列の作製、siRNAの導入条件の最適化に時間がかかったため、当初予定したsiRNAによる受容体の発現抑制による解析では結果を出すまでには至らなかったが、実施条件は明らかにできた。このように、本年度の研究はおおむねに順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後の研究については、まず、乳がん細胞において、共存するERRα、ERRγ受容体をsiRNAによるノックダウンし、BPA暴露のエストロゲン様の活性変化を解析する。そして、協働作用する核内受容体とERタンパク質間の相互作用を共免疫沈降法、BN-PAGE法、蛍光免疫染色やゲルシフトアッセイなど手法を用いて詳細に解析する。また、平成25年度の引き続き、天然の応答配列を用いて、活性増強作用を調べる。さらに、BPAによるエストロゲン様活性増強の分子メカニズムを確認・検証するため、ER、ERR受容体に1 μM以下の強さで結合する新世代ビスフェノールおよびフラボイド化合物など約30物質について、乳がん細胞でBPAと同様の手法で、細胞増殖に与える影響を解析と作用に関わる受容体の同定を行う。

次年度の研究費の使用計画

注文していた試薬の納品が、在庫切れのために間に合わなかったため。
4月に納品予定である。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Constitutive α-helix-peptides required for functional dimerization of estrogen-related receptor γ (ERRγ)2014

    • 著者名/発表者名
      Liu, X., Nishimura, H., Fujiyama, A., Matsushima, A., Shimohigashi, Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2013

      巻: Peptide Science 2013 ページ: 429-430

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Three-dimensional docking modeling to human nuclear receptors for exploration of bisphenol-A targeting receptors2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuyama, Y., Liu, X., Nishimura, H., Matsushima, A., Shimohigashi, Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2013

      巻: Peptide Science 2013 ページ: 459-460

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bisphenol A-induced epigenetic mutations in circadian pacemaker neuropeptide mRNAs of hyperactive Drosophila fruit flies2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuo, A., Umeno, S., Matsuyama, Y., Nakamura, M., Takeda, Y., Sumiyoshi, M., Liu, X., Matsushima, A., Shimohigashi, M., Shimohigashi, Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2013

      巻: Peptide Science 2013 ページ: 457-458

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence analysis of the circadian evening pacemaker neuropeptide hugγ gene in the bisphenol A-exposed fruit fly Drosophila Brain2014

    • 著者名/発表者名
      Umeno, S., Matsuo, A., Matsuyama, Y., Nakamura, M., Takeda, Y., Sumiyoshi, M., Liu, X., Matsushima, A., Shimohigashi, M., Shimohigashi, Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2013

      巻: Peptide Science 2013 ページ: 455-456

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression and mutation analyses of brain neuropeptide genes of endocrine-disrupting bisphenol A-exposed hypoactive mouse2014

    • 著者名/発表者名
      Sugiyama, M., Matsuo, A., Saito, T., Uchimura, E., Liu, X., Matsushima, A., Shimohigashi, Y.
    • 雑誌名

      Peptide Science 2013

      巻: Peptide Science 2013 ページ: 453-454

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ビスフェノールの核内受容体応答の分子メカニズム2013

    • 著者名/発表者名
      下東 康幸, 劉 暁輝, 松島 綾美
    • 雑誌名

      Endocrine Disrupter News Letters

      巻: 15 ページ: 5

  • [学会発表] 高い構成活性をもつ一群の核内受容体に新規な機能の発見-自発活性型核内受容体はDNA結合なしにリガンド活性受容体の活性を大きく増強する2014

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝, 池田 伸, 松島綾美, 下東康幸
    • 学会等名
      リスクサイエンス研究フォーラム2014
    • 発表場所
      福岡大学セミナーハウス
    • 年月日
      20140310-20140310
  • [学会発表] 構成活性な核内受容体ERRγは確かにダイマーとして働く2014

    • 著者名/発表者名
      藤山明菜, 劉 暁輝, 松島綾美, 下東康幸
    • 学会等名
      リスクサイエンス研究フォーラム2014
    • 発表場所
      福岡大学セミナーハウス
    • 年月日
      20140310-20140310
  • [学会発表] ハロゲン結合が牽引力となるフェノール誘導体のERRγ受容体結合2014

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝, 巣山 慶太郎, 松島綾美, 下東康幸
    • 学会等名
      リスクサイエンス研究フォーラム2014
    • 発表場所
      福岡大学セミナーハウス
    • 年月日
      20140310-20140310
  • [学会発表] エストロゲン関連受容体ERRγの強制ダイマーかを目指したCys導入変異体設計2014

    • 著者名/発表者名
      松島綾美, 劉 暁輝, 藤山明菜, 下東康幸
    • 学会等名
      リスクサイエンス研究フォーラム2014
    • 発表場所
      福岡大学セミナーハウス
    • 年月日
      20140310-20140310
  • [学会発表] ビスフェノールAによるエストロゲン様活性増強の分子機構:自発活性化型核内受容体による協働作用2013

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝, 池田 伸, 松島 綾美, 下東美樹, 下東 康幸
    • 学会等名
      環境ホルモン学会 第16回研究発表会
    • 発表場所
      東京大学山上会館(東京都)
    • 年月日
      20131212-20131213
  • [学会発表] ビスフェノールA受容体ERRγの活性発現にはダイマー構造が必須である2013

    • 著者名/発表者名
      藤山明菜, 劉 暁輝, 松島 綾美, 下東 康幸
    • 学会等名
      環境ホルモン学会 第16回研究発表会
    • 発表場所
      東京大学山上会館(東京都)
    • 年月日
      20131212-20131213
  • [学会発表] エストロゲン関連受容体ERRγのCys変異体が示すレポーター活性特性2013

    • 著者名/発表者名
      松島 綾美, 劉 暁輝, 藤山明菜, 下東 康幸
    • 学会等名
      環境ホルモン学会 第16回研究発表会
    • 発表場所
      東京大学山上会館(東京都)
    • 年月日
      20131212-20131213
  • [学会発表] Constitutive α-helix-peptides required for functional dimerization of estrogen-related receptor γ (ERRγ)2013

    • 著者名/発表者名
      Liu, X., Nishimura, H., Fujiyama, A., Matsushima, A., Shimohigashi, Y.
    • 学会等名
      4th Asis-Pacific International Peptide Symposium-50th Japanese Peptide Symposium (APIPS 2013)
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク(大阪)
    • 年月日
      20131106-20131108
  • [学会発表] エストロゲン関連受容体γ型(ERRγ)へのビスフェノールAの適合誘導的結合における特徴的構造要因2013

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝, 松島 綾美, 下東美樹, 下東 康幸
    • 学会等名
      第37回蛋白質と酵素の構造と機能に関する九州シンポジウム
    • 発表場所
      雲仙 新湯ホテル(長崎県雲仙市)
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] ビスフェノールAおよび新世代ビスフェノールの核内受容を介したシグナル毒性2013

    • 著者名/発表者名
      下東 康幸, 劉 暁輝, 松島 綾美
    • 学会等名
      フォーラム2013:衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 発表場所
      九州大学医学部 百年講堂(福岡市)
    • 年月日
      20130913-20130914
    • 招待講演
  • [学会発表] エストロゲン関連受容体γ型のビスフェノールA特異的結合における構造要因2013

    • 著者名/発表者名
      劉 暁輝, 松島 綾美, 野瀬 健, 下東美樹, 下東 康幸
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] ダイマー界面に存在するリシンクラスターが保証するヒト核内受容体ERRγの自発活性2013

    • 著者名/発表者名
      藤山明菜, 劉 暁輝, 松島 綾美, 野瀬 健, 下東 康幸
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] ER-ERR 協働作用によるビスフェノールAのエストロゲン様活性増強の分子機構2013

    • 著者名/発表者名
      池田 伸・劉 暁輝・松島綾美・下東康幸
    • 学会等名
      平成25年度日本生化学会九州支部例会
    • 発表場所
      佐賀大学農学部(佐賀市)
    • 年月日
      20130518-20130519
  • [学会発表] 核内受容体ERRγを自発活性に導くリシンクラスターのダイマー化への寄与2013

    • 著者名/発表者名
      藤山明菜・劉 暁輝・松島綾美・野瀬 健・下東康幸
    • 学会等名
      平成25年度日本生化学会九州支部例会
    • 発表場所
      佐賀大学農学部(佐賀市)
    • 年月日
      20130518-20130519

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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