研究課題
若手研究(B)
本研究の最大の目的は、乳がん細胞においてビスフェノールAがエストロゲン受容体α(ERα)とエストロゲン関連受容体γ(ERRγ)の協働作用による増殖作用を示すメカニズムを分子レベルで解析し、解明することである。平成25年度は、(1)MCF7、T47D、MDA-MB-361細胞の3種乳がん細胞において、内在性のER2種、ERR3種の遺伝子発現量の解析に成就した。いずれの細胞にもERαは多量に発現、ERRαとERRγの発現はわずか、ERβとERRβは非常に低発現であることが分かった。また、転写共役因子4種について、SRC1は多く発現し、SRC2は中程度で、pGC1α、pGC1βは低発現していることが判明した。(2)T47D細胞に10 nMのBPAおよびE2を暴露させると、ERβとERRβの発現量が上昇することが判明した。ERα、ERRαとERRγの発現量は減少した。二つの集団を分別する要因の存在が示唆された。(3)MCF7細胞にERsとERRs受容体の各発現プラスミドを導入し、BPA暴露による活性変化を調べたところ、ERα、ERRα、ERRγの発現はBPA活性を増強した。一方、ERβ、ERRβ発現は活性を抑制した。(4)化学物質E2、BPA、BPAF、BPC、HPTEをMCF7細胞へ暴露し、WST-1アッセイにより細胞増殖効果を解析したところ、いずれも約2倍の増殖作用を示した。(5)ERα/ERRα、あるいはERRγ発現系によるBPA活性増強の分子機構の基盤を解明するために、これらの変異受容体を発現し、レポーター遺伝子アッセイにより解析した。その結果、BPAのエストロゲン様活性はBPAがERに結合して発揮されること、また、ERRα、あるいはERRγは協働的に作用し、これらへのBPA結合無しに増強されることが明らかとなった。(6)ER/ERRの協働作用を示す応答配列の実態を調べるため、EREを複数、あるいはEREとERREを一つずつ含む天然型応答配列の作製を実施した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度では、3種の乳がん細胞において、E2暴露およびBPA暴露の有無で内在性9種類の受容体の遺伝子発現量の変化解析に成就した。さらに、ERおよびERRの一過性発現によるBPA活性の増強、あるいは抑制する場合のあることが判明した。そして、乳がん細胞増殖試験により、BPAが乳がん細胞増殖作用を示し、それがERを介していることが明らかとなった。また、BPAが活性増強のために結合する受容体はERであることが判明した。一方、応答配列の作製、siRNAの導入条件の最適化に時間がかかったため、当初予定したsiRNAによる受容体の発現抑制による解析では結果を出すまでには至らなかったが、実施条件は明らかにできた。このように、本年度の研究はおおむねに順調に進展している。
今後の研究については、まず、乳がん細胞において、共存するERRα、ERRγ受容体をsiRNAによるノックダウンし、BPA暴露のエストロゲン様の活性変化を解析する。そして、協働作用する核内受容体とERタンパク質間の相互作用を共免疫沈降法、BN-PAGE法、蛍光免疫染色やゲルシフトアッセイなど手法を用いて詳細に解析する。また、平成25年度の引き続き、天然の応答配列を用いて、活性増強作用を調べる。さらに、BPAによるエストロゲン様活性増強の分子メカニズムを確認・検証するため、ER、ERR受容体に1 μM以下の強さで結合する新世代ビスフェノールおよびフラボイド化合物など約30物質について、乳がん細胞でBPAと同様の手法で、細胞増殖に与える影響を解析と作用に関わる受容体の同定を行う。
注文していた試薬の納品が、在庫切れのために間に合わなかったため。4月に納品予定である。
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Peptide Science 2013
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