研究課題
乳がん細胞の増殖は、エストロゲン受容体(ER)へのエストロゲンの結合が引き金となる。近年、この増殖作用は内分泌撹乱物質・ビスフェノールA(BPA)でも観察され、大きな問題となっている。最近我々は、ERとエストロゲン関連受容体(ERR)が共存すると、活性が相乗的に増強されることを発見した。そこで本研究では、乳がん細胞におけるこの増強作用の分子メカニズム解明を目指す。平成26年度には、まず、DNAに活性増強に必要な構造要因があるかの解明に取り組んだ。すなわち、EREエレメントは通常3回リピートであるが、この繰り返し数の影響を調べた。1~5回リピートのEREを持つレポーター遺伝子アッセイの結果、4回リピートで最大になった。また、3回リピートでリピート間スペースについて検討したところ、22 bpで最大になった。このように、DNAのエレメント構造にはER-ERRの協働作用に必須な構造要因があることが判明した。一方、核内受容体側の構造要因について調べたところ、活性増強にはER、ERRともにホモダイマー構造が必要なことが明らかとなった。さらに、これら受容体ホモダイマーについて直接的な相互作用はないことが判明した。以上の結果は、ERとERRの協働作用ではDNAエレメント構造に適合する他の転写活性化因子が介在している可能性が判明した。乳がん細胞MCF7でBPAの活性増強を調べたところ、SRC1以外の全てのコアクチベーター遺伝子の発現量が減少することが明らかとなった。これは17β―エストラジオール(E2)でも起こった。MCF7にBPA、あるいはE2を暴露すると、pGC1αの発現量が上昇し、他は減少した。これらの結果より、BPAの活性増強には特定のコアクチベーターが関与していることが推定された。
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