研究課題/領域番号 |
25740026
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研究機関 | 北海道薬科大学 |
研究代表者 |
中田 章史 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (70415420)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 野生動物 / 放射線 / 染色体 / DNA |
研究実績の概要 |
本研究では継続的に行なっている放射線汚染地域における野生生物の放射線影響評価を行なうことを目的としている。2014年度も、継続的に行っている春と秋の動物調査および保管している齢査定用、染色体解析用、ミトコンドリア DNA 解析用の標本の解析を行った。 前年度に引き続き、放射性物質の汚染による野生動物の影響を評価するために福島県内4地点、および対照として青森県2地点のアカネズミの個体群年齢構成並びに個体成長の調査を行なった。福島県の放射線汚染地域では現在除染が行われており従来捕獲していた地点でのアカネズミの個体の捕獲が困難となったため、新たに高線量、中線量地域の捕獲場所を変更する必要がある。アカネズミの脾臓に含まれるリンパ球を対象として染色体異常を解析した結果、浪江町内で捕獲されたアカネズミおよび対象地域である弘前市内で捕獲されたアカネズミの両者において、染色体の部分切断等が観察された。その頻度は浪江町産アカネズミよりも弘前市産アカネズミの方が高かった。染色体の部分切断は化学物質や重金属など放射線以外の要因によっても生じることが知られているため、これらの異常の要因は不明である。一方、放射線被ばく時に特異的に生じる二動原体染色体や環状染色体は両地域において観察されなかった。アカネズミの生物学的線量評価用プローブの開発に着手した。これまでのマイクロダイセクション法では、レーザービームによって対象染色体をチューブに回収する方法で行っていたが、 DNA の単離が困難であった。そのため、チューブの蓋に直接回収する方法に変更したところ、対象染色体がチューブに存在することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年までのアカネズミの捕獲箇所の空間線量率および土壌の放射線を測定した。環境中の放射線線量率は年々減少してきていることを確認した.2013年秋期までの捕獲した個体の染色体および齢構成,個体成長度の解析を行った。2011年1~10月出生の個体が青森県に比べ福島県では有意に少ないという結果を得たが、それ以降の出生個体の存在が確認されている。そのため、福島県においてアカネズミの個体数の減少は生じていないと考えられる。 2012年度におけるミトコンドリアDNAの塩基置換率は福島個体群と青森個体群間において有意な差は認められなかったが、福島個体群において推定日齢と塩基置換率でかなりの相関(r=0.5356)が見られた。 アカネズミの生物学的線量評価用プローブの開発を行っている。これまで染色体標本からのDNAの単離が困難であったが、今年度DNAの回収効率が改善された。
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今後の研究の推進方策 |
福島県の放射線汚染地域では現在除染が行われており従来捕獲していた地点でのアカネズミの個体の捕獲が困難となったため、捕獲候補地の探索を行う。 継続的に行っている春と秋のアカネズミの捕獲、標本作製、個体群調査、ミトコンドリア DNA、染色体、被ばく線量の解析を行う。 平成27年度はアカネズミの生物学的線量評価用プローブの開発を試みる。これまで対象染色体の回収法の改善が見られたので、対象染色体からのDNA抽出を行う。単離した DNA のアカネズミの核型上の分布をFISH法によって調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アカネズミの生物学的線量評価用プローブの開発において、染色体の回収が困難であったため、プローブ開発費用が減少したことにより次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き今年度と同様の研究計画で予算を執行する予定である。 弘前大学から北海道薬科大学へ所属が変更になったため、旅費の割合が増加する予定である。
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