研究課題
放射線汚染地域に存在する放射性物質の自然減衰、除染の実施により、放射線の影響を受けたアカネズミの捕獲が困難になることが予想されたため、新たにアカネズミの捕獲場所を追加した。今年度も引き続き、アカネズミの採集、染色体標本の作成および放射線影響解析用の臓器の採材、捕獲場所の空間線量率および捕獲地点に生息するアカネズミの個体被ばく線量を測定した。空間線量率は2015年度と比較して減少していたが、アカネズミの個体被ばく線量に変化は観察されなかった。被ばく線量の内訳に関して、ガラス線量計の吸収線量は空間線量率に依存して増加するが、内部被ばく由来の線量は、明確な差は検出されなかった。このことから、環境状況が改善したとしても、生物個体にうける放射性物質の影響は継続する可能性があることが示唆された。放射線汚染地域に生息しているアカネズミは低線量域長期被ばく受けているため、顕著な染色体異常が検出できない可能性がある。そのため、染色体異常の検出を容易にするためにアカネズミの動原体および染色体ペインティングプローブの作製も進めてきた。動原体に特異的な配列を単離するために、マウスとアカネズミの近縁種の動原体およびヘテロクロマチン領域の配列を参考にプライマーを作製し、様々な組みわせでPCRによる増幅を行った。その結果、動原体に特異的な配列を含んでいる増幅産物を得ることができた。今後、この増幅産物のクローニングを行い、動原体に特異的な配列を単離する予定である。一方、染色体ペインティングプローブは、マイクロダイセクション法により、1番染色体を構成しているDNA断片を得た。しかしながら、このDNA断片をプローブとしたFISHの結果、1番染色体以外にもクロスハイブリダイゼーションした。今後、このDNA断片のクローニングおよびFISHの条件検討が必要である。
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Radiat Res
巻: 187 ページ: 161-168
10.1667/RR14234.1.