研究課題/領域番号 |
25740028
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
倉井 淳 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (70529396)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 黄砂 / 越境大気汚染 / 長期曝露 / 炎症発癌 |
研究概要 |
近年,黄砂や越境大気汚染が原因と考えられる煙霧の健康影響が懸念されている.本邦においては,これらの長期曝露による健康影響に関する検討は少なく不明な点が多い.本研究では,黄砂,越境大気汚染物質の長期曝露が発癌に与える影響を検討することを目的としている. 1.マウスモデル,細胞株を用いた基礎的検討 本研究計画時から,ハイボリュームサンプラーを用いた大気粉塵捕集を継続的に行ってきたが,本年度は気象条件の影響もあり,動物実験に使用するだけの十分な粉塵を捕集するのに予想以上の時間を費やした.したがって,当初の計画を一部変更し,平成25年度捕集した粉塵の大部分は次年度用の実験試料として保存することとした.予備実験として捕集した一部の黄砂時粉塵を,ごく少数マウスに気管内投与したところ,気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞が増加すること,炎症性サイトカイン濃度が上昇する可能性が示唆されており,実験手技も問題ないことは確認した. 2.臨床検体(切除肺組織)を用いた臨床的検討 鳥取県内に長期在住している非喫煙肺腺癌患者の術後標本における癌周囲正常組織部位の元素解析を蛍光X腺法にて計画した.今年度は,測定手技の確認を目的として,1検体のみを用いて元素解析を行った.黄砂上に付着していることがわかっている非土壌成分である重金属(Cd, Mn, Ni,Pb)などは,今回の検体からは肺組織内に沈着していることが確認されなかった.Fe成分がやや多く沈着していたが,大気粉塵吸入との因果関係ははっきりしなかった.今後は,他地域からの検体も含め,正常肺組織を収集し,さらに検討していくことを計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大気粉塵捕集は当初から継続的に行っているが,気象条件の影響もあり,動物実験を行うだけの十分な大気粉塵試料を捕集するのに,相当量の時間を要した.そのため当初予定していた動物実験が予定どおりできず,大部分の粉塵試料は次年度用として保存し,一部の粉塵で予備実験のみ行った.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に捕集し保存している大気粉塵に加えて,次年度も引き続き大気粉塵捕集を行い,動物実験が実行可能な十分量の粉塵が確保できた時点で,当初予定していたマウスモデルを用いた炎症発癌評価ならびに,発癌メカニズム解析として酸化ストレス反応,炎症性サイトカイン評価を行う.継続的な捕集作業にもかかわらず,動物実験に必要な十分な粉塵が確保できないと判断した場合には,使用する粉塵量が少なくても刺激が可能な,細胞株を用いた評価を優先して行う方針とし,黄砂に代表される大気粉塵の毒性ならびにメカニズム解析を可能な限り行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に,マウスを用いた基礎的研究を行う予定としていたが,実験に必要な十分量の大気粉塵を捕集するのに予想以上の時間を必要としたため,当初予定していた動物実験が実行できなかった.そのため,予定していたマウスの購入・飼育料金をはじめとした動物実験のため経費を使用しなかった. 動物実験が可能な十分量の大気粉塵を捕集したうえで,平成25年度に予定していたマウスモデルや細胞株をもちいた基礎的研究を開始する.マウスの購入・飼育料金をはじめとした動物実験のため費用に使用する計画である.
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