愛媛大学農学部附属農場にて、水田からの温室効果ガス発生に与えるBiochar(竹炭)の施用効果を2012年秋から2015年秋に圃場条件下で調査した。さらに2014年秋に新たにBiochar施用区(NB区)を設け、Biochar施用効果の経年変化を調べた。温室効果ガス発生量はクローズドチャンバー法を用いて測定した。 2015年のCH4発生量は対照区が189 kg C ha-1であったのに対し、Biochar施用区(B区)とNB区はそれぞれ255および260 kg C ha-1であり、Biocharの施用区でCH4発生量が約1.3倍に増加した。この差はB区およびNB区で水稲移植から中干開始前の期間にCH4フラックスが高かったことに起因していた。移植から中干開始までのCH4発生は主に施用した稲わらに起因する。稲わら施用量(kg ha-1)に対するCH4発生量の比(CH4/RS)は対照区が0.049であったのに対し、B区およびNB区はそれぞれ0.065および0.068であり、2015年度ではBiocharが水稲生育前期の稲わら施用に由来するCH4発生を助長したと考えられた。対照区とB区の3年間のこの期間の気象要因とCH4/RSとの関係では、気温とCH4/RSとの相関はなかった。一方でその期間の積算降水量とCH4/RSとに指数的な相関関係があり、降水量増加に伴うCH4/RS上昇程度はB区が対照区よりも大きかった。このことは、降水量の増加に特に影響を受けると考えられる要因(特に土壌の還元状態)がBiocharの施用によりCH4発生に適した環境の形成に寄与したと考えられた。具体的な要因については特定できておらず今後の研究課題だが、今後要因を特定できれば将来の気候変動に伴ってBiocharの施用が水田からのCH4発生に与える影響について予測と対処方法を提案できると考えられる。
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