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2014 年度 実施状況報告書

フライアッシュとセメントを混合した硫化物イオン吸着材の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25740038
研究機関神戸大学

研究代表者

浅岡 聡  神戸大学, 自然科学系先端融合研究環内海域環境教育研究センター, 助教 (60548981)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードフライアッシュ / セメント / ポゾラン反応 / 硫化物イオン / 底質改善 / 吸着材
研究実績の概要

【研究目的】 石炭火力発電所から発生するフライアッシュ(FA)とセメントを造粒・ポゾラン反応させて合成される吸着材(FAC吸着材)は硫化物イオンに対して高い吸着能を有することが確認されている.しかし,最適なFAとセメントの混合比は明らかになっていない.本研究では,FAC吸着材のFAとセメントの混合比を変化させ,硫化物イオン吸着能に与える影響を明らかにし,その要因として考えられる比表面積,ポゾラン反応率との関係を考察することを目的とした.
【実験方法】FAとセメントの混合比率を0~100%の間で段階的に変化させ,粒径10 mm程度のFAC吸着材を合成した.FAC吸着材を窒素ガスで脱気した硫化物イオン溶液(30 mMトリス塩酸緩衝液:pH8.2)に添加し,硫化物イオン濃度を経時的に測定した.FAC吸着材のポゾラン反応率はFAC吸着材のFA混合比から,養生後に含まれる未反応のFA重量を差し引くことで推定した.
【実験結果と意義】FAの混合比が95%までは強度が不足しておりFAC吸着材の形状が崩壊した.また,FAの混合比率が高いほど吸着量も高かった.なお,セメント100%では硫化物イオンの吸着特性は確認されなかった.ポゾラン反応は,FAのシリカ,アルミナがセメントの水和の際に生成される水酸化カルシウムと反応し組織が緻密になる反応であり,FAC吸着材の強度発現や比表面積の制御に重要である.FAが最も反応した混合比は,FAが70%のFAC吸着材であった.また,SEM写真からポゾラン反応による針状結晶が確認された.これらの結果から,FAとセメントの混合比を変化させることによってポゾラン反応率や比表面積を制御できるようになればFAC吸着材の性能を向上させ,海洋の底質改善材として利用できる点で意義がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26-27年度の計画では,FAC吸着材への硫化物イオンの吸着試験,重金属の溶出試験,FAC吸着材の吸着サイトおよび吸着した硫化物イオンについてのX線吸収微細構造分析(XAFS分析)の3項目が予定されている.平成26年度では,フライアッシュ(FA)とセメントの混合率を変化させるとFAの混合比率が高いほどFAC吸着材の硫化物イオンの吸着能が高いことが明らかになった.また,FAC吸着材は用途に応じた強度が必要なため圧壊強度試験および,前述の硫化物イオンの吸着能との兼ね合いから,FAとセメントの混合比においてFA混合比が85%前後が最適であることがわかった.次に,最適なFAとセメント混合比のFAC吸着材を合成し,重金属の溶出試験および,FAC吸着材の吸着サイトおよび吸着した硫化物イオンについてのX線吸収微細構造分析を行う予定である.したがって,概ね計画通りに研究は進んでいると判断した.

今後の研究の推進方策

これまでの研究より硫化物イオンは吸着後,FAC吸着材のマンガン酸化物によって主として硫黄へと酸化されることが明らかになっている.FAとセメントの混合比を変化させると硫化物イオンの吸着能が変化する原因を明らかにするため,以下の実験を行う.フライアッシュ(FA)とセメントの混合率を変化させたFAC吸着材のマンガンのK吸収端のX線吸収微細構造スペクトル(XAFS)を測定する.加えて,FAC吸着材に吸着した硫黄についてXAFS分析を行う.マンガンや硫黄の標準物質のXAFSスペクトルについても測定し,吸着した硫化物イオンの化学形態を把握する.さらに,マンガンや硫黄の標準試料とFAC吸着材のXAFSスペクトルを比較する.最後に,すべての実験結果を総合し,FAとセメントの混合比を変化に伴うポゾラン反応,比表面積の制御および硫化物イオンの吸着サイトの活性化メカニズムを考察し,最適なフライアッシュとセメントの混合比を決定し,高性能なFAC吸着材を作製する.

次年度使用額が生じた理由

フライアッシュとセメントの最適比率を決定後に,重金属の溶出試験やX線吸収微細構造分析を行う計画である.平成26年度内では,フライアッシュとセメントの最適比率を決定することはできたものの,重金属の溶出試験やX線吸収微細構造分析までは実験が進んでおらず,重金属の溶出試験の経費および外注費,X線吸収微細構造分析のための施設使用料,出張旅費などの経費が当初の計画よりも少なかったため.

次年度使用額の使用計画

平成26年度に執行できなかった,重金属の溶出試験に必要な高純度試薬,プラスチック器具類の購入,化学分析の外注費および,硫黄,マンガンの化学形態を明らかにするため,X線吸収微細構造分析のための施設利用料,測定のための旅費に使用する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] Development of a coal fly ash and cement mixture for optimum removal of hydrogen sulfide from water2015

    • 著者名/発表者名
      Satoshi ASAOKA, Hideo OKAMURA, Shinjiro HAYAKAWA
    • 学会等名
      The 19th Hiroshima International Symposium on Synchrotron Radiation
    • 発表場所
      Hirosima University (Higashi Hiroshima, Hiroshima, Japan)
    • 年月日
      2015-03-05 – 2015-03-06
  • [学会発表] フライアッシュとセメントを混合した底質改善材による閉鎖性水域からの硫化物イオンの除去2014

    • 著者名/発表者名
      浅岡 聡,岡村 秀雄,早川 慎二郎,中本 健二,樋野 和俊,柳楽 俊之
    • 学会等名
      日本分析化学会第63年会
    • 発表場所
      広島大学(広島県東広島市)
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Coal ash and cement mixture can remove hydrogen sulfide from marine sediments in enclosed water bodies2014

    • 著者名/発表者名
      Satoshi ASAOKA, Hideo OKAMURA, Katsuyoshi NAKANO, Kenji NAKAMOTO, Kazutoshi HINO
    • 学会等名
      ECSA54
    • 発表場所
      Sesimbra, Portugal
    • 年月日
      2014-05-12 – 2014-05-16

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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