最終処分場における硫化水素(H2S)発生機構は嫌気的環境での硫酸塩還元菌による硫酸塩(SO4)の還元反応である。硫酸塩の供給源は廃石膏(CaSO4)ボードである。現在の硫化水素発生抑制・拡散対策はガス抜き管の設置(好気化)や含有資材による覆土(硫化水素捕捉)である。ガス抜き管は設備の導入・管理にかかる費用が高く,覆土は発生後の捕捉であって発生抑制とはいえない点が問題である。一方,下水道分野で実証されている別の好気化方法である硝酸塩添加法は,微生物の酸素利用順位の差を利用して硫化水素を抑制する。本研究では不用物中に含まれる硝酸塩の利活用を考え,コンポスト由来の硝酸塩による抑制効果と,既存手法であるガス状酸素添加による抑制効果を比較して評価した。 今回の実験条件であるコンポスト硝酸塩を336 mg-O/L添加しても硫化水素発生抑制効果はみられなかった。ただし昨年までの実験で,薬品硝酸塩の添加では抑制効果がみられたことから,コンポスト抽出液には,硝酸塩による硫化水素発生抑制効果を阻害する要素があると考えられる。今後は不用物で薬品硝酸塩の代わりになり,かつ抑制効果を持つものを検索し,かつ阻害要因を探る必要がある。また硫化水素の発生は硫化水素発生系溶液中の有機物濃度の影響を大きく受ける。コンポスト硝酸塩は有機物も含んでいる。正しい硫化水素発生抑制効果を判断するためには有機物の制御範囲を守ることが重要となるため,コンポスト由来有機物量を除外して制御する方法を発案する必要がある。
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