研究課題/領域番号 |
25740043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
尾上 幸造 宮崎大学, 工学部, 助教 (50435111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 鉄鋼スラグ水和固化体 / 多孔質 / 鉄溶出 / 腐葉土 / 圧縮強度 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,多孔質型鉄鋼スラグ水和固化体(POSSC)から溶出する鉄の酸化防止による媒液中溶存鉄濃度の向上を目的とし,鉄分供給源である製鋼スラグを被覆するペーストに腐葉土を混入することの効果について検証した。 材料として,溶銑予備処理スラグ(粒径:10~5mm),高炉スラグ微粉末(4000ブレーン),フライアッシュ(JIS 2種),消石灰および市販の腐葉土を用いた。昨年度の検討結果を踏まえ,POSSCの目標空隙率を25%に設定した。供試体は直径75mm・高さ150mmの円柱とした。鉄溶出試験においては,円柱供試体を高さ方向に3等分した上下端部の切断面をエポキシ樹脂によりコーティングしたものを試験体とし,溶媒にStandard Methodsに従って調整した人工海水を用いた。 検討の結果,ペースト中の腐葉土混入率の増加にともない,POSSCを浸漬した人工海水中の溶存鉄濃度が向上することが明らかとなった。24時間溶出試験で得られたPOSSCからの鉄溶出速度は,腐葉土混入率0%のケースを基準とした場合,混入率1%,2%および3%でそれぞれ3.2倍,5.0倍および6.6倍となり,ほぼ直線的に増大することが示された。一方,腐葉土の混入率が2%以上の領域においてはPOSSCの圧縮強度が低下する傾向が認められ,混入率2%での圧縮強度を100%とした場合,混入率3%および6%ではそれぞれ58%,3%となり,混入率6%では強度の発現がほぼ期待できないことが分かった。 被覆ペーストに腐葉土を混入することで,POSSCから溶出した溶存鉄の酸化が抑制され,人工海水中の溶存鉄濃度が向上することが示された。本実験条件下においては,腐葉土混入率を2%とすることで,鉄分供給性能および強度が最適となった。今後,POSSCの空隙率や腐葉土の種類が実験結果に及ぼす影響についても検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25~26年度の検討により,(1)POSSCの圧縮強度と鉄分供給性能は空隙率の変化に対しトレードオフの関係にあり,最適な空隙率が存在すること,(2)POSSCの圧縮強度と鉄分供給性能は被覆ペースト中への腐葉土混入率に対しトレードオフの関係にあり,最適な腐葉土混入率が存在することが明らかとなった。これらの知見は,POSSCを海藻増殖ブロックとして適用する際の性能規定型配合設計に資するものであり,有用であると考えられる。異なる実験条件下におけるデータの蓄積や長期的な性能評価および環境安全性の確認が今後の課題として挙げられるものの,当初設定した目的に対する研究の進捗状況は概ね良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年度の検討において,POSSCの性能規定型配合設計を確立するための基礎的な知見を得ることができた。一方,最適配合におけるPOSSCの圧縮強度は10MPaを下回っており,製品運搬や設置時の安定性の観点から若干の強度改善が必要である。また,POSSCの長期的な鉄分供給性能や環境安全性についても確認する必要があると考えている。そこで,平成27年度は,まず被覆ペーストの水結合材比,スラグ骨材の粒径を変えた検討を行い,それらがPOSSCの圧縮強度に及ぼす影響について検討する。さらに,所要の強度を満足する条件において,POSSCの長期的な鉄分供給性能および有害重金属の溶出に対する安全性について実験的に明らかとする予定である。
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