研究課題/領域番号 |
25740049
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
角田 裕志 岐阜大学, 応用生物科学部, 客員准教授 (50601481)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニホンジカ / 森林下層植生 / 採食圧 / 土壌侵食 |
研究概要 |
落葉広葉樹天然林において、ニホンジカの採食圧による下層植生被害の実態調査を行った。本年度は岐阜県の西濃地域を研究対象地域とした。 調査の結果、南部地域を中心にニホンジカの採食による顕著な下層植生被害が生じていることが明らかとなった。とくに、ササ類の退行が顕著にみられ、アオキなどの嗜好性樹種の減少や消失も多く確認された。調査を行った林分では、ササ類や低木類がほぼ消失してディアライン(ブラウジングライン)が形成されている例やシキミ、アセビ等の不嗜好性樹種が優占する例が観察された。また、ササ類や低木類が消失した急傾斜地では、リター層の流出と面状侵食など土壌侵食が発生していると考えられた。その一方で、ニホンジカによる下層植生被害の程度は北上とともに軽減傾向を示し、例えば揖斐川町北部地域では、被害がほとんど確認できなかった。また、急傾斜地であってもリター層の流出や面状侵食は確認できなかった。森林下層植生被害の状況はニホンジカの生息密度指標の分布とおおよそ一致していた。以上の結果から、岐阜県西濃地域では南部ほどニホンジカによる森林下層植生に対する被害が大きいこと、そして滋賀県や福井県と接する北部地域ではいまだ被害が少なく、今後被害拡大の恐れがあると考えられた。 また、シカ不在地の状況について把握するために、岩手県を参照地域に設定して調査を行った。 今後は岐阜県全域におけるニホンジカによる森林下層植生被害の現状を把握するとともに、調査林分における渓流環境調査と水生無脊椎動物相調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年はニホンジカによる森林下層植生被害調査の調査手法の習得に時間を要した。また、調査地域の森林植生や道路網等に関する情報収集が思うように進まなかった。これらの事情によって、本調査の開始時期が7月以降となってしまい、調査地域を西濃地域に限定せざるを得ず、当初予定していた岐阜県全域におけるニホンジカによる被害実態を把握することができなかった。さらに、調査対象地域の近隣にアクセス可能な渓流・小河川が存在しないことが多かったことから、渓流環境調査ならびに水生生物調査を実施可能な地域を見つけることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度においてニホンジカによる森林下層植生被害調査手法を効率的に進める方法や体制を確立することができたため、本年度は岐阜県全域におけるニホンジカ被害の調査を完遂できると考えられる。 また、岐阜県が運営する統合型地理情報システムを用いることができるようになったため、県内の山間地における地形や植生、河川等の情報を一元的に把握することが可能となった。このため、地図情報を活用した効率的な調査計画の実施が可能となり、調査対象とする林分および渓流河川を事前によく検討したうえで調査を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査技術の習得や体制確立のために、本調査の開始が7月までずれ込んでしまい、当初予定していた岐阜県全域におけるニホンジカによる森林植生被害調査を実施できなかった。このため、上記調査分のための旅費の一部に余剰金が生じた。 昨年度に調査が完了した西濃地域を除く岐阜県全域を対象として、ニホンジカによる森林植生被害調査を実施するとともに、渓流河川における河川環境・水生生物調査を計画通りに実施することによって、昨年度の余剰金を含めた助成金を使用する計画である。
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