昨年度に引き続き、産業連関表と家計調査の概念整理の作業を進め、対応する領域を明らかにした。その上で、産業部門と家計消費品目の対応を手作業でおこない、接続表を完成させた。この接続表を用いて、家計支出統計の品目ベースでのライフサイクルGHG排出原単位を算出した。 次に、カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム記載のCFP-PCRの情報より、うるち米、ハム、および衣料用洗剤を、調査対象品目として選定し、一般的な製品のカーボンフットプリント(CF)を算出した。同時に、日常生活に伴う1人1日あたりのGHG排出量も算出した。 全国の成人900人を対象に、うるち米、ハム、および衣料用洗剤について、CFのみの表示した場合、CFに加えて日常生活のGHG排出量も表示した場合、CFに加えて一般的な製品のCFも表示した場合の3通りについて、選好の変化を選択型コンジョイント分析により調査した。その結果、うるち米は銘柄に対する選好が大きいため、CFに対する選好は有意にならなかった。しかし、ハムと衣料用洗剤では、CFに対して有意な支払意思額が観測された。一方、情報を付加した場合は、支払意思額が低下する傾向にあり、過大な情報は好まれないことが示唆された。負荷する場合どうしでは、一般的な製品のCFを表示した場合の方が、日常生活のGHGを表示した場合よりも大きく、基準値を表示するならば前者が好まれることがわかった。 近年、SDGsの制定など、環境問題だけではなく社会問題への高まりを背景に、エコ消費だけではなくエシカル消費への関心も高まっている。そこで、ソーシャルライフサイクルアセスメント(SLCA)を実装し、Tシャツの労働問題に対する選好も調査した。その結果、縫製プロセスの労働問題の有無が最も重要視され、日本で販売されているTシャツでは、中国における労働問題に伴う社会影響が最も大きいことが判明した。
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