本研究の目的は、MDCEVモデル(Multiple Discrete-Continuous Extreme Value Model)を用いて旅行者の周遊行動を分析するための手法開発を行うことである。この手法開発は、理論研究に大きく貢献するだけでなく、旅行者の需要行動の正確な把握を通じて、観光シーズンに発生する交通渋滞の緩和や国立公園をはじめとする自然保護地域における利用分散化など、環境や観光、交通など幅広い分野の政策立案に寄与することが期待されるものである。 初年度はMDCEVモデルと関連の深いKTモデル(Kuhn-Tucker Consumer Demand Model)に関する基本文献を収集するとともに、基本的なモデルの構築と推定のためのプログラミングを行った。北海道の国立公園における目的地選択データを用いて、実際に推定が行えることを確認した。 次年度(最終年度)では、知床国立公園における目的地選択データと北海道の国立公園における目的地選択データを用いて分析を進める予定であったが、データに課題が残されていたため、新しく入手した全国の国立公園における目的地選択データを用いて分析を行った。その結果、時間配分を考慮しない従来の目的地選択モデルとも整合的な結果を得ることができた。現在、上記までの研究成果をまとめ、国際学会での発表を申請するとともに、このモデルとデータを用いて周遊行動モデルの構築について引き続き作業を進めている。
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