まず,北海道における市民参加によるセイヨウオオマルハナバチのモニタリング活動が,トマト生産者のモラル・ハザード(本種の逃亡防止の努力を怠る行動)を抑制する可能性について検討した。北海道のトマト生産者を対象に実施したアンケート調査に基づいた分析の結果,この活動が連帯責任に基づいた心理的罰則を生産者に与え得ることを明らかにした。 また,本種の法的規制の決定過程において,北海道のトマト生産者が採った行動の解釈をボランタリー・アプローチに基づいて行った。本事例では,トマト生産者が自発的に本種の逃亡防止に取り組むことによって,政府が本種の使用を条件付きで許可する可能性を高めたり,使用禁止を求める生態学者の主張を弱めることが期待でき,生産者は自らの利得を改善できる状況にあったため,生産者は法的規制開始前に自発的に本種の逃亡防止に取り組む誘因を持ったことを明らかにした。 比較対象のため,熊本県のトマト生産者を対象にアンケート調査を実施したが,この分析結果については研究発表を行うまでには達しなかったため,今後研究発表を行うこととする。 続いて,滋賀県のNPO法人会員を対象にアンケート調査を実施し,外来種防除と在来種保護に関する人々の意識に影響を及ぼす要因について検討した。分析の結果,外来種防除と在来種保護に関する意識には,年齢や生物多様性に関する知識だけでなく,幼少期の体験が関係していることを明らかにした。 さらに,琵琶湖周辺の侵略的外来種であるオオバナミズキンバイの防除活動への市民ボランティアの参加要因について検討した。分析の結果,防除対象となる外来種に関する知識や防除活動の実施場所までの移動距離等が,防除活動への参加の意思決定に影響を及ぼすことを明らかにした。また,彼らのボランティア活動を持続的なものにするためには,行政による財政的支援が必要であることが明らかとなった。
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