研究課題/領域番号 |
25740066
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
杉本 卓也 千葉商科大学, 政策情報学部, 講師 (90599391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境アセスメント / 公共事業評価 / 環境社会システム |
研究概要 |
本研究は、環境アセスメントと公共事業評価制度の2つの制度に着目して、公共事業の立案の際の環境や災害等のリスク情報の統合を効率的に実施するための方策を検討することを目的としている。 平成25年度では、公共事業評価の中で、環境や災害等のリスク情報の記載状況の実態把握を行った。当初予定通り道路事業に焦点を当て、公共事業評価(事前評価)対象事例における「環境情報の記載」「環境アセスメントの実施状況」の確認を過去3年間分を対象として調査を行った。調査対象とした事例は、国土交通省のwebサイトで公共事業評価の結果が公開されている、全92件の新規事業採択時評価結果である。内訳は、直轄事業64件、補助事業28件である。 公共事業評価結果において、環境アセスメントの実施の有無に関する記載が確認されたのは26件にとどまっており、残りの66件については環境アセスメントの適用対象事業か否かについても、公共事業評価結果からは判断できない状況となっていることが明らかになった。一方で、補助事業について事業主体となる自治体に確認したところ、多くの事例で自主的な環境調査が実施されていることが把握された。環境アセスメントと公共事業評価の2つの制度の実施にあたっては、両制度間関係について規定はなく、制度運用で環境情報等の記載が図られていることが明らかとなった。また、補助事業においては、地方自治体によっては、当該自治体における公共事業評価と国土交通省における公共事業評価の間に実施時期に関する制度間関係が明確になっていないことも把握された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公共事業評価制度において、環境や災害等のリスク情報の記載状況の実態把握は達成された。 公共事業評価制度の把握は、自治体を対象としたアンケート調査で実施する予定となっていた。当初は、環境アセスメント条例と公共事業評価制度の制度間関係の把握に主眼を置いていたが、前述のリスク情報の記載状況の把握をおこなった調査の際に、事例によっては環境アセスメントの適用規模未満の案件について自主的な環境調査が行われた事例があることが把握された。本研究では、意思決定過程で環境情報を含むリスク情報を如何に統合するかに主眼をおいており、環境アセスメント条例による環境情報だけでなく、自主的な環境配慮の結果が如何に取り扱われるかが重要となる。自主的な環境配慮が実施された岡山県と鳥取県の事例について、先行事例調査を実施した。そのため、自治体を対象としたアンケート調査は平成26年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、公共事業評価の導入状況を把握するための自治体を対象としたアンケート調査を行う。調査にあたっては、環境アセスメントと公共事業評価の情報共有の規定の有無や、制度の運用にあたり、環境アセスメントと公共事業評価の制度間で環境情報の活用、情報公開の実態や活用可能性に対する担当課の認識も把握する。また、平成25年度の調査で明らかとなった、自主的な環境配慮が行われた際の情報の取り扱いについても調査項目として追加する。さらに、意思決定との連動の観点から、都市計画決定手続きとの関係や、環境影響評価審査会、都市計画審議会等の審査・諮問機関等の役割分担についても把握を行う。 あわせて市民を対象として、公共事業の立案過程におけるリスク情報に対する認識について、参加、コミュニケーションの観点から意識調査を行う。この調査では、リスク情報に対するニーズとともに、市民と行政の間のコミュニケーションに対する認知ギャップを明らかにする。以上を平成26年度に実施する。 平成27年度では、一連の意思決定過程を通じたリスク情報の統合にあたっての制度設計のあり方を検討するために、事例分析を実施する。環境アセスメントと公共事業評価が併せて実施された事例を選定し、事業主体(事業部局)、環境アセスメント所管部局(環境部局)及び公共事業評価所管部局(事業部局、財務部局)を対象にヒアリング調査を行う。事例分析を通じて、現行のリスク情報の扱われ方を評価し、立案における有用な知見と共に、改善点を明らかにする。なお、研究計画調書作成時点では、事例分析に適切な事例が把握されない場合も考えられたが、平成25年度の調査によって、環境アセスメントと公共事業評価の両制度が適用された事例が存在することが確認された。事例選定は、上記の自治体アンケート調査の調査結果を適宜踏まえて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に実施予定であった、自治体を対象としたアンケート調査を実施する。この調査は、公共事業評価制度の運用実態を全国レベルで把握するために実施する。なお、この調査を踏まえて、以降の詳細な事例分析のための事例選定を行う。 また、市民を対象とした意識調査についてアンケート調査を実施する。この調査によって、市民・行政間のリスク情報に係るコミュニケーションギャップを明らかにする。 上記調査に係る費用と集計の際の研究補助者への謝金、分析に係る統計ソフトのための費用として使用する。自治体への調査では郵送法によって、市民を対象とした調査ではwebアンケートを実施する予定である。
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