研究課題/領域番号 |
25740067
|
研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
南部 和香 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (00409426)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中古品 / E-waste / 国際資源循環 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中古品としての性質を明示的に取り入れたE-waste貿易における政策効果を理論および実証的に検討することである。平成26年度は、研究計画にしたがい、中古家電製品の輸出に関連するデータの更新を行うとともに、当該貿易に影響を与える規制強化の影響を分析するための理論モデルを構築し、定性的な分析結果を得ている。また、台湾において現地調査を行った。 理論モデルでは平成26年4月1日に導入された中古品輸出に対する規制のしくみを取り入れている。この規制により、中古品の輸出者は輸出品がバーゼル法の承認を必要としないことを証明するために「使用済み電気・電子機器の中古品判断基準」に従う必要がある。これは、バーゼル条約のE-wasteガイドライン案に関連する条件であることから、本研究に取り入れることとした。 モデルの構造は、国内資源循環と国際資源循環が輸出業者やリサイクル業者など6つの主体の行動として描かれている。そして、輸出前および輸出後の動作確認等の追加的費用の変動が取引量、環境負荷、自国と外国の社会厚生へ与える影響について分析している。分析の結果、規制の効果は外国の中古品輸入が弾力的かどうかによること、また、取引量が大きく輸入業者の取引費用が小さい場合には輸出前検査は輸出後検査で代替しうることが示された。これらの結果は、学会で報告されている。 こうした定性的な分析結果をもとに中古家電の輸出関数の推定と修正に着手している。また、台湾での現地調査を行った。日本と台湾のリサイクル産業およびリサイクル政策の比較を理論・実証分析にフィードバックさせることで、より本研究の目的に沿った分析が可能となると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中古家電貿易の新たな側面として、中古品判断基準を導入した理論モデルを構築することで定性的な分析結果を得ることができたため。これらの分析結果は、政策効果に関するシミュレーションの一つのケースとして検討することができる。また、台湾での現地調査を行い、家電製品とパソコンのリサイクルの現状を調査するとともに、日本と台湾のリサイクルシステムについて意見交換できたことは、国際資源循環を考える上で有用であったため。そして、台湾での現地調査を通して国内研究者との共同研究を開始することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果をもとに、中古品貿易に対する規制や政策の効果について、定性的・定量的な分析を行い、持続可能な国際リユース・リサイクルシステムについて検討する。理論分析については、これまで成果をもとに理論モデルの修正をすすめ、政策効果を検討する。実証分析については、必要に応じデータの更新を行い、理論分析で得られた定性的な結果について実証的側面からの分析、シミュレーションおよび考察を加えていく。 また、26年度から開始した日本と台湾の家電リサイクルに関する共同研究を含め、最終年度の研究成果について学会報告を行うとともに、雑誌論文へ投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度途中での本務校の異動によって、一時的に研究が中断されたために未使用額が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
旅費に関しては、使用計画に基づき国内および国際学会への参加および報告に使用する。8月に台湾で開かれる学会報告はアクセプトされているので実施は確実である。人件費・謝金については、フィールドワークおよび理論分析での専門知識の提供に対する研究協力者への支払いに用いる。物品については必要図書の購入に用い、その他英語論文の校正に用いることを計画している。
|