平成27年度も研究計画に従い、データの拡充を行いつつ中古家電輸出の理論実証分析を行い、現地調査で得られた知見を考慮したリサイクル制度比較を行った。まず、中古家電輸出の理論実証分析としては、VARモデルを構築し、資源価格のショックの波及効果を分析した。変数には中古エアコン輸出量、銅スクラップ、鉄スクラップ、銅価格、実質実効為替レートなどが含まれている。本年度の研究では、中古品とスクラップ資源との代替性をモデルに導入した資源価格の変動の波及効果をみることができた。こうした変動が中古品やスクラップ資源という形での資源流出にどのような影響を与えるのかが明らかになったことは本研究での成果であると考えられる。 また、日本から中古品やスクラップが輸出される背景として、制度的な要因があるのかを検討するために、日本とは対象的にすべてのリサイクル対象品目が同じシステムで取り扱われ、また、排出からリサイクルまでの各段階でインセンティブがある台湾の制度をもとに複数の分析を行った。まず、日本と台湾のリサイクルシステムを経済モデルとして表し定性的な手法を用い比較分析を行った。次に、税や補助金を考慮したリサイクルシステムをモデル化し理論分析およびシミュレーションを行った。分析では、税・補助金に加え、中古家電の部品の欠損率を導入している。分析の結果、税・補助金が回収量やリサイクル量等へ与える影響が示され、また回収業者が果たす役割の重要性が示された。我が国でも、中古品を国内循環させる方がメリットがあるシステムを形成しない限り、経済的要因によって中古品が海外にわたる流れを変えることは困難であることが示唆された。 以上より、日本から輸出される中古品やスクラップなどの要因分析および波及効果分析に加え、制度的な要因が当該輸出を促進させうるのかどうかという点についても考察できたことは大きな研究成果であると考えられる。
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