研究概要 |
接近報知音に求められる音量と周波数特性の定量的理解のための心理音響実験,ならびに音高変化と加速感の関係を解明するための印象評価実験を実施した。 音量と周波数特性を理解するための心理音響実験として,幅広い年齢層の被験者を対象とした音量調整実験を実施した。刺激音には,国交省ガイドライン等の動向を考慮した接近報知音を設計し,これを利用した。被験者にバイノーラル録音された環境音と接近報知音を提示し,提示された環境下において自分が望む音量に接近報知音の音量を調整するよう求めた。被験者(19~74歳)は,その年齢から3群に分けられ,群間の差を検討した。その結果,高年群でより大きな音量が求められることが予想されたが,最適聴取レベルに顕著な違いは観察されなかった。しかしながら,最低聴取レベルは,若年群および中年群は環境騒音レベルに対応する傾向があったのに対して,高年群では環境騒音レベルに依らず一定にある傾向にあった。 また,音高変化と加速感の関係を解明するための印象評価実験として,車両走行映像と合成音による模擬走行音を用 いて加速感関するシェッフェの一対比較法(中屋の変法) による印象評価実験を行った。映像刺激は,停止状態から13.9m 先の地点で20km/hに達するよう5秒かけて単調に加速させた車両映像であった。音刺激は,100, 400, 2000Hzを中心周波数とする1/3オクターブバンドノイズで,その中心周波数を線形にシフトさせた。実験の結果,周波数シフトによって加速感が強まり,その強まり方は周波数帯域とシフト率に影響されることが示された。 研究成果は国内外の音響・騒音関連学会および国連自動車基準調和世界フォーラムの専門会議にて発表された。 また,平成26年度に計画していた,走行音シミュレータによる印象評価実験についても,システムの構築と部分的な検討を開始した。
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