本研究は中途視覚障害者の生活自立、社会参加及び安全性の向上を図ることを最終目的に、まずは中途視覚障害者の環境設備の中でも未開拓な触覚機能を利用する設備とそのデザイン、すなわちピクトグラムを凸化させた「触知ピクトグラム」に焦点を絞り、触知時の行動特性の解明とその適切な評価法の検討を行い、それらをもとに視覚情報のみならず触覚情報をも提供できるピクトグラムの開発を行うものである。触知ピクトグラムが実際の周辺案内地図上で目的地を示したり、そこに至るまでの歩道上に設置したりすること等、移動支援ツールとして単独で使用される場合も想定して、これまでのサイズよりも大きなサイズを考慮に入れた上で、最適サイズを検討することとした。 そこで本研究では、まず既存のJIS規格ピクトグラム「標準案内用図記号」から、中途視覚障害者が屋外で生活行動範囲を広げるために必要と思われるピクトグラムを20個選定し、カプセルペーパーで触知化(凸化)した。アイマスクをした晴眼者に触知化した5つのサイズ(30mm×30mm、60mm×60mm、90mm×90mm、120mm×120mm、150mm×150mm)の触知ピクトグラムを提示し、任意の触知探索により何のピクトグラムであるかを判定させ、その際、種々の触知行動(触知正答率・触認知時間・触複雑度・分かりにくさ・確信度)を測定した。また、関連要因である知能および視覚性記憶能力も評価し、触知行動との関連を確認した。その結果、触知ピクトグラムの最適サイズは120mm×120mmから150mm×150mmの間であれば、触知しやすく、分かりやすいものであることが示唆された。
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