研究課題/領域番号 |
25750012
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
鈴木 奈穂美 専修大学, 経済学部, 准教授 (10386302)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | インフォーマル介護者 / 仕事と介護の両立 / 介護者支援施策 |
研究実績の概要 |
介護者のワークライフバランスの実現を阻む障壁をみつけるため、既存の統計・調査を用いて、インフォーマルな介護をしている労働者の実態を分析した。介護離職した人は、職場の介護に対する理解や介護者の健康状態などが介護離職の原因となっていたため、これらの要因にアプローチできる施策の必要性を示唆することができた。一方、介護しながら転職した人は、介護が原因で離職をした後、介護がひと段落して再び働けるようになっても、再就職に長期間かかっていた。このことから、介護離職者の再就職支援の必要性も浮かび上がった。 次に、安倍政権の「介護離職ゼロ」に関連する政策を整理した。その目玉が、介護休業関連制度の改正であった。育児介護休業法に規定されている介護休業関連制度の改正に関する歴史を概観しながら、制度的な課題について分析した。政府自ら「介護離職ゼロ」を政策目標に掲げたことで、インフォーマル介護に従事している労働者の立場にたった制度改正が進んだものの、介護休業期間や短時間勤務制度等の措置の取得期間の短さ、労使交渉の困難さ、経済的支援の貧弱さといった課題が抽出された。 さらに、市民レベルで行っている先進的な介護者支援施策や自治体レベルで行っている介護者支援施策について調査をした。厚生労働省の「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」では職場でおこなう介護者支援をまとめており、地域包括支援センターやケアマネジャーが介護者支援の中心的存在であることが指摘されている。このことは否定しないが、これらが行う介護者支援は、直接的なサービスを提供するよりも相談業務が中心である。これらによる介護者支援が有効に機能するためには、介護者に紹介できる介護者支援メニューが地域社会で充実していくことも必要である。つまり、職場と地域の両方で介護者支援の拡充が、介護者の就労・生活支援にとって重要と考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年に出産のため、この研究を一時中断していた。研究は再開しているものの、平成28年度は出産以前のスピードで研究を進めることができず、予定よりも進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、日本の介護者支援施策の整備の課題について分析するため、海外の介護者支援の取り組みについて情報収集を行うとともに、職場や地域の介護者支援施策の実態について検証していく。そして、これまでの遅れを取り戻していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年に出産をし、研究を中断した。研究再開はしたものの、平成28年度は育児時間確保のため、予定していた出張を見合わせたこと、研究補助者の管理が困難となり、アルバイトの採用を控えていたことにより、次年度使用額が生じることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、昨年度おこなえなかった海外出張があるため、旅費を中心に使用していく予定である。
|